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【校閲ダヨリ】 vol.32 終助詞の「か」はすなわち「?」か (趣味の言語事項考察)


 
みなさまおつかれさまです。

今回は、「疑問の終助詞『か』は疑問符『?』とイコールか」という、ふと私の頭の中に浮かんだ問い(狂気を感じますね)を解消すべく、思考メモ的に書き起こしていこうかと思います。


最初に、至極当たり前な事実から申し上げますと、「」も「」も、疑問文で用いられます


・明日は雨が降ります
・明日は雨が降ります

これはどちらも、相手に天気を聞いていますよね。

・あなたはどこの出身
・あなたはどこの出身

   
こちらは、相手に出身地をたずねる場面です。


このように、一見すると「か」と「?」は同じ使い方をすると思われます。
   
ただ、厳密には同じではないですよね。
「か」を用いた文のほうが、堅い感じがします。
この段階ですでに「疑問の終助詞『か』は疑問符『?』とイコールか」という問いには「NO」と答えることができますが、せっかくなのでもう少し用例を見ていくことにしましょう。
   

・この映画、怖かった
・この映画、怖かった

   
どちらも「怖いかどうか」ということを相手に聞く文ですし、「か」のほうが堅い感じがするのもその通りですが、「か」のほうではさらに「年齢や立場で上の者が下の者に聞く」ニュアンスが感じられます
しかしこのニュアンスは
   

・この映画、怖かったですか

   
と丁寧語(美化語)の文末にするとたちまち失われてしまうので、常体文(である調)の特徴でもあるのかもしれません
   
   
次に、「?」は、「か」に対して使用範囲が広いという特徴があります。
   

・なにがなんでも合格するぞ(強意+確認)
・〜するってことでいいね(念押し+確認)

   
という風に、別の終助詞と組み合わせることができ、終助詞の意味を残しつつ、相手に確認することができます
   
   
また、「?」を用いることで、「か」を使用するよりも文を短く済ませることができます
   

・(好きなアーティストはジョン・メイヤーだと言われて)
  ジョン・メイヤー

   
この文は、「か」を使用して書き換えると
   

・ジョン・メイヤーとは誰ですか

   
という風になりますが、7音も省略することができます。
   
   
   
このように、やはり「か」と「?」はイコールとは言えません
   
   
当たり前といってはその通りなんですが、「?」は、本来日本語の使用字句にはなかった言葉です。

日本国語大辞典』(小学館)では、

日本文では明治二〇年(一八八七)ごろから次第に広く用いられるようになった。

   
と記されており、開国後、便利な記号ということでだんだんと一般に浸透していったのでしょう。
   
   
カギカッコの回で参照した「くぎり符号の使ひ方(句読法)(案)」にも、「?」の使い方が載っているのですが、これには
   

一、疑問符は、原則として普通の文には用ひない。たゞし必要に応じて疑問の口調を示す場合に用ひる

   
と、昭和21年時点では発話部分にのみ用いることがよしとされていたようです。
   
   
さて、これまで「か」と「?」の違いについて書いてまいりましたが、ちょっと視点を変えます。
ビジネスの場面では、「か」と「?」はどのような使い分けがされているのでしょうか。
   
個人的な感覚ですと、ビジネスメールなどといった場面においては「?」を避ける向きにあるように感じられます。
   

・次号の校閲スケジュールは●日〜●日でよろしいでしょうか?

   
というように「か」と併せて「?」を使用する場面はあるにせよ、「か」を省き「?」で済ませる場面はそうそうないように思います
   
これには先で書いたような「?」の特徴が関係しているものと考えられ、
   

「か」のほうが堅い → 「?」は柔らかい
「?」は文を短くすることができる(端折る)

   
というふたつの潜在的なイメージが、節度をもってあたる必要のあるビジネスシーンに馴染まないのではないでしょうか。
   
   
しかし、この違いもあくまで現時点でのものですので、今後「?」の使用可能場面が拡大していく可能性は大いにあると思われます。
   

今回は、とりとめのないテーマとなってしまいました。
しかし、ふだん何気なく使用している文字や記号について考えてみるのも、なかなか面白いものです。
   
みなさんも、言語学生活、はじめてみませんか?
   
   
   
それでは、また次回。
   
   

参考
日本国語大辞典』(小学館)
くぎり符号の使ひ方(句読法)(案)」(文部省教科書局調査課国語調査室)



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