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コロナ禍で考え方が違う家族に言うことを聞いてもらう方法について

Bonjour! パリ在住、日本語の声とことばのトレーナーゆうじです。

今回は、コロナ禍で考え方の違う家族がいる場合、どうやって説得すればいいのかについて解説します。

この原稿は2020年6月3日に執筆しています。

いよいよ、フランスではコンフィヌモン(都市封鎖)が更に一段階緩められ、パリの場合は飲食店がテラス席のみですがオープンしました。

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満員のテラス席。パリの人は法律が緩められると、その限界まで自由に動きます。

それでなぜ今回、この問題を解説しようと思ったかと言うと、東京の友達とZoom飲み会をしていたときです。

その中の一人から「みんな新型コロナで自粛しているのに、80歳近い母親が、毎日友達の家に遊びに行ってしまう。自分の思い通りに動いてくれなくて、すごく困っている」という話を聞いたんです。

緊急事態宣言は撤回されたものの冬には第二波も予想されていて、まだまだ終息したとは言えない状況です。そんな戦いはこれからだという状況なのに、僕の友達はすでに疲れ果てているようでした。

それで、その話を詳しく聞いているうちに、うーんそうかー、もうちょっと楽に説得する方法があるのに、そのやり方だと大変だろうな―、と思ったんですね。

そこで今回は、僕の友達を応援する意味を込めて、また同じような状況で困っている方たちに、長期化が予測されるコロナ禍の中で家族にどうやって言うことを聞いてもらえばいいのか。声とことばの専門家(演劇は説得の芸術とも言われているので、説得の専門家でもあります)の立場から解説ていきたいと思います。

新型コロナは怖くないと言っている、年を取った母親の外出を自粛させたい!

僕もそうなんですが、年老いた両親がいると新型コロナでのいろいろな心配事があって大変ですよね。

幸い僕の両親は田舎に住んでいるので、初めからあまり人とは接触しないのもありのんびりしたものですが、両親が都会に住んでいたらと思うと気が気ではないのは十分理解できます。

僕の東京に住んでいる友人は、正にそんな悩みを抱えている40代後半のコーラスが趣味の優しい雰囲気の女性です。ここではC子さんと呼ばせていただきます。

彼女は、80歳近い母親と二人暮らしですが、自粛中でも母親が友達の家に遊びに行ってしまうと嘆いています。

なぜ、C子さんの母親は、安全のために自宅にいてほしいと悩んでいる彼女の思いを無視して出かけてしまうんでしょうか。

新型コロナの危険性を説明して説得を試みると・・・

まずC子さんに、どんな説明をしたのか聞きました。

彼女は、新型コロナの危険性をわかってもらおうと、老人にとってどれほど危険な病気なのかを、テレビを見せたり、インターネットの記事を読んで聞かせたりしたそうです。

すると彼女の母親は、「わたしには、わたしの人生があるの!友達とお茶をしない人生なんて人生じゃない!!」といって出かけてしまうそうなんです。

さて、母親になんて言ったら、言うことを聞いてもらえるんでしょうか。

正しい情報を伝えているのに、なんで母親を説得できないの?

皆さん、説得するってどういうことだと思いますか。

インターネットには説得術のようなノウハウが無数に転がっています。その多くは「相手の話をよく聞きましょう」というような一般的なことや、心理学を使ったノウハウなどが書いてあります。

相手の話を聞こう、というような一般的なことは、まあその通りなんですが、いまいち家族を説得するのにどう使っていいかわかりませんし、心理学を使ったノウハウは有効そうに思えるんですが、なんか難しく書いてあってよくわかりません。

なのでここでは、説得するとはどういいうことなのか、C子さんと母親のやり取りを検証しながら、具体的に何に気を付けて説得すればいいのか、本当に役立つように解説していくことにします。

例えば、あなたは新型コロナが怖いと思っているとして、怖くないという主張の人に出会ったとしましょう。

あなたは、相手からこんな理屈で説得されたとします。

コロナの何が怖いのか理解できない。インフルエンザと同じじゃないか!それよりも景気が悪化して経済での死人の方が多くなるから、もう自粛はやめて普通の生活に戻るべきだ!!

一度は聞いたことがある主張ではないでしょうか。

それで、あなたはこの主張を聞いて、そうだね、インフルエンザと同じだね。早く外へ出て日常を取り戻そう!!

となりましたか?

そうです。全くそんな気になりませんね。

そのとき相手との論争で、難しいことを並べられて「そうなんだー」って口だけで言うことはあるかもしれません。でも、あなたの考えや行動が変わることはありません。

なぜでしょうか。

それは、心や感情が説得されていないからです。

この「新型コロナが危険ではない」という理論、きちんと一本の筋は通っています。あなたは、これらを聞いてどう感じたか思い返してみましょう。

コロナの何が怖いのか理解できない。→いや、たくさん死んでるし。

インフルエンザと同じじゃないか!→全然違う、もっと怖い病気だよ。

それよりも景気が悪化して経済での死人の方が多くなる→いや、自粛を緩めたらその比較じゃないくらい人が死ぬし。

もう自粛はやめて普通の生活に戻るべきだ!!→そんなわけないでしょ!!

とまあ、相手が説得しようと投げかけている善意の一言一言に対して、反発していますよね。

私はこう思う、というような意見ではなくて、論文や統計データを元に、もっと詳しく安全だと主張されたとしても、あなたの気持ちは変わらないでしょう。

つまり理屈で説明されると、その説明がどんなに正しかったとしても、反発してしまうので、あなたは考え方を変えることは決してないんです。

と言うことは、テレビやインターネットの情報で母親を説得しようとしたC子さんの説得方法では、母親は意固地にしてしまうだけで、まったく効果がなかったんです。


じゃあ、理屈じゃない説得って一体どういうことなんでしょうか。

次回、解決編です。ご期待ください。


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