コロナ禍で考え方の違う家族に言うことを聞いてもらう方法について 解決編!!
Bonjour! パリ在住、日本語の声とことばのトレーナーゆうじです。
前回から、コロナ禍で考え方の違う家族がいる場合、どうやって説得すればいいのかについて解説しています。
この原稿は2020年6月3日に執筆しています。
僕の友人で東京に住んでいるC子さんは、40代後半のコーラスが趣味の優しい雰囲気の女性です。80歳近い母親と二人暮らしなんですが、自粛の最中でも母親が友達の家に遊びに行ってしまうと嘆いています。
彼女は、母親にテレビやインターネットの情報を一生懸命伝えて、説得を試みますが、なぜかうまくいきません。
どう説得すれば、安全のために自宅にいてほしいと悩んでいるC子さんの思いが伝わって、母親は考え方を変えてくれるんでしょうか。
では、続きです。
説得するには、人情物刑事ドラマの手法が一番!!
C子さんが母親を説得する方法は、よく昔の人情物の刑事ドラマなんかであった、ベテラン刑事さんが犯人と一緒に涙しながら、かつ丼を食べさせて自白させる、あのシーンをマネすればいいんです。
単純にかつ丼食べさせれば、言うことを聞いてくれるという話では、もちろんありません。
おそらく、美味しくカツ丼は食べてくれるかもしれませんが、全く意見は変えてくれないでしょう(笑)。
では、どういうことなのか解説していきす。
まずは、昔の刑事ドラマの典型的な流れのおさらいです。
頑なに、殺人の自白を拒む犯人。
若い刑事さんが、「お前がやったんだろ!」ってすごんでみても
犯人は「だからやってねえって言ってんだろ!」と返してきます。
「お前のアリバイがないことは解っているんだ!!」って言ってみても
「だから、あのときは家で一人で寝てたんだっていってんだろ!!」とアリバイがないことは認めつつ、犯人はまったく自白する気にはなりません。
やっぱり、若い刑事では実力不足のようです。
そこに満を持して、ベテラン刑事が登場します。
ベテラン刑事は、静かに犯人の前に座って、とつとつと話し始めます。
ベテラン刑事「殺されたあの若い男性、実はお前さんと同じひとり親でな、お母さまがお一人で大変な苦労をして、彼を育てたそうなんだ」
犯人「そうかよ、、、でも、俺には関係がねえ。」
ベテラン刑事「お前さんも一人親で、子供の時は貧乏でずいぶん苦労したそうじゃないか」
犯人「、、、そうなんだ、母ちゃんは朝から晩まで働き詰めで、独りぼっちで寂しかったな、でも、母ちゃん夜遅くに帰ってきても、飯だけはその場で炊いてくれてさ、おかずなんてなんもなくて、二人で炊き立ての飯に、かつお節と醤油をかけて食ったっけな。うまかったな。それは今でも大好物さ」
ベテラン刑事「そういえば、お前のお母さまに会いに行ってきたよ。」
犯人「、、、そうかい、、、」
ベテラン刑事「お母さまは『うちの子は乱暴者だけど本当は優しい子だから、そんなことするはずがない!!私だけは何があっても、あの子のことを信じるよ、、、でも何か偶然が重なって罪を犯してしまったんなら、キチンと罪を償えって、あいつに伝えてくれないかい。』」
犯人「、、、」
ベテラン刑事「それから、こうも言われたな。『お前の母親は私だけだ。だから何があっても、私だけはお前を待っている、、、。』とな。なあ、お前を待ってくれている母親のためにも、俺にだけは本当のことを教えてくれないか。」
犯人「、、、」
ベテラン刑事「、、、かつ丼でも食うか、、、」
犯人「、、、実は、、、」
まあ、多少強引ですが、ざっとこんな流れでしょう。
ベテラン刑事は、殺された被害者の家族の無念な思い、犯人の置かれた不遇な境遇への共感、心配しているお母さんの話などを駆使して、最後には涙ながらに自白させてしまいました。
若い刑事と何が違ったんでしょうか。
ベテラン刑事は自白を得るために、若い刑事のように自白しろと命令したり、論理でねじ伏せるようなことは一切しません。
まず、ベテラン刑事は犯行とはなんの関係もない母親に会いに行って、ただ純粋に一人の人間として犯人のことを知ろうとしました。そのベテラン刑事の行動に犯人が感動し、ベテラン刑事は犯人からの信頼を勝ち取ります。
更に彼は母親から『待っている』という言葉を引き出して、犯人に帰るべき場所を提案しています。
犯人は、警察に必要以上の罪を被せられてしまうんじゃないかと言う疑念、収監された後に帰る場所がないという孤独感、この二つの大きな恐怖を持っているため自白できません。
その犯人の抱えている恐怖を、ベテラン刑事さんは「母親に会って犯人を知るという行動」によって払拭したんですね。
このベテラン刑事の説得術のポイントは、信頼と提案だということがわかります。
このような典型的な人情物のドラマは、今も形を変えて残り続けています。人の心を動かすのは理屈ではなくて、最後は心なんだとみんなが思い続けているからです。
ね、だんだん理屈じゃ説得できないって意味がわかってきたでしょ。
いよいよ、お母さんを説得!
では、C子さんは、どのように母親を説得すべきなんでしょうか。
一番のポイントは、信頼と提案です。
まずは心を使って、母親の意見に共感することからはじめなくてはなりません。なぜなら、母親に反対の意見を言うC子さんは既に母親からの信頼を失っているからです。
信頼を獲得するには、母親と同じ立場に立って彼女の意見に共感することが必要です。
ただのわがままに聞こえる母親意見に、心を使って共感しましょう。たとえその意見が、C子さんの意見と180°違っていてもです。
これまでC子さんは、母親の意見を聞くと
「友達と、お茶しないと死んだも同じ」→お茶しないくらいでは死なない!
「家にいると、返って不健康で死んでしまう。」→コロナで先に死んでしまう。
このように意見を、頭ごなしに否定してしまっていました。
では、共感するいう作業を入れると、例えばこんな風に考えることもできます。
「友達と、お茶しないと死んだも同じ」→本当に死んでしまうほど辛いことなんだろうか?→確かに孤独というものは辛いことだ→母親が孤独になると本当に死んでしまうかもしれない。→難しい問題だ。
「家にいると、かえって不健康で死んでしまう。」→80歳近くにもなると日々、体力の衰えを感じているのかも。→体力が落ちるということは死ぬほど怖いことなんだな→難しい問題だ。
あれ?意外と難しい問題だなと、本当にC子さんも感じることができたとき、この感覚というものは相手にも伝わります。そのとき初めて母親は、C子さんが私の事で真剣に悩んでくれていると気付くとができるのです。
また、これまで理屈で考えていたときは、母親の意見は聞く価値のない単なるわがままでした。ところが共感という作業を入れると、母親の考えもまた真実のように感じることができるのです。
この共感があると、次の提案をスムーズに考えることができます。
「友達と、お茶しないと死んだも同じ」→孤独というのは難しい問題だ→Zoomお茶会を開けるように練習してあげよう!!
「家にいると、かえって不健康で死んでしまう。」→健康とは難しい問題だ→早朝の人のいない時間帯に、一緒に散歩する習慣を作ろう。
などと具体的な提案にまで、考えを巡らせることができるのです。
C子さん、ぜひ一度母親の言っている、理不尽とも思える発言について、心を使って共感してみてください。今までわかり合えなかった事が、お互いに分かり合えるようになると思いますよ!!
まとめ
今回は僕の友人C子さんの悩み「コロナ禍の間、家族で意見が違っていた場合、どうやって言うことを聞いてもらえばいいのかの問題」について解説してきました。
今回解説した方法の一番のポイントは共感してから、提案を考えるというものです。
この説得方法は、今回のケース以外にも、家族や親友など身近な大切な人と意見が違っていた場合には応用が利きます。
でも、共感することが難しい相手、と問えば仲のの悪い知り合いの意見を変えることはできません。そもそも、相手に共感することが難しいからです。
しつこいようですが、相手を議論によって言い負かしてみも、何の意味もありません。返って反発を招くだけです。
説得によって相手の考えを変えるには、まずあなたの考え方を変えることです。相手の立場になって考え、相手に共感をすることができたとき、初めて心と心が通じ合い信頼関係が生まれます。そして、相手にとって聞く価値のある提案を考え出すことができるようになるのです。
そのときの、あなたの真剣に悩んでいる、割り切れない優しい声だけが、相手の心を動かすことができるのです。
残念ながら、新型コロナ収束まで長い時間がかかると言われています。病気の最新情報も大切ですが、お互いに心あるもの同士、思いやりのある言動を忘れないように暮らしていきたいですね。
ではまた!!
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