『「しょぼい投資」の話』:生きづらい私達の投資とは

 誕生日に息子が「1500円ぐらい出してあげるから好きなものを買いなよ」と言ってくれたので、Amazonで「この本なら息子もあとで読むかも」とチョイスしました。『とにかく死なないための「しょぼい投資」の話 お金がなくても生き抜こう』。



 著者の「えらいてんちょう」さんの本はこれまで確か3冊読んでます。割と好きな文体です。部分部分だけ見ると理路整然・淡々と、本全体を通してはグルーブ感強め、で、この本は特に前半がんばって読んだ人だけ味わえる快感が魅力です。
 一昨年くらいに「おもしろい若者が出てきたなぁ」と思いTwitterをフォローし、YouTubeもちょこちょこ見てたんです。そこでたまたま出演してた藤岡暢君のお話を聞いて、夙川のKamo Cafeまで会いに行き、のちに「統合失調症ぶっちゃけトーク」というイベント登壇をオファーさせてもらったんでした。(コロナショック初期の2月ににぎりぎり開催できたの、何だかずいぶん遠い昔の事みたいです。)
 藤岡君もそうなんだけど、えらてんさんの「しょぼい企業」界隈の動きには、ホームスクーリングしている我が息子の将来を考える上でずいぶん勇気をもらったという気持ちがあります。今回のこの感想もそういう一連の流れの中にあります。
  前置きが長くなりましたが、では、感想です。2021年2冊めに読んだ本です。(1冊目は坂口恭平さんの「お金の学校」)
 えらてんさんの文章は非常に読みやすく分かりやすい。大切な事を、今まであまり言われていない切り口で丁寧に伝えてくれているので、スッと腑に落ちます。えらてんさんの本を読まれてきた人には、コロナ後のえらてんさんは何を言うんだろうという辺りが読みどころになるのではないでしょうか。タイトルに含まれている「とにかく死なないため」、帯に書かれている「全員生き残っていきましょう」、などのフレーズに集約される系の話がグッと刺さります。「生き残る」という命題が地球上のこれだけ多くの人々に同時共有された事は過去にそうそうなかったですもの。
  この本の前半(1章、2章)では、そんな今の「先はどうなるか分からない」バグが発生した乱世だからこそ、一攫千金ねらった投資を考えるより、「死なないため」にどういうことを考えるべきか教えてくれます。ちょうどさっき触れた坂口恭平さんの『お金の学校』も最初の方で「最低限のラインを確認しておく」という話が出てきます。時代の先端を行く若い知性が共通の切り口から話を始めているのは偶然ではないと思います。
 第3章が要です。いや、一番大事なのは最後の4章、5章なんですが、前半の話を受けて、投資とは、お金とは、価値とは、という話がコンパクトにまとまっていて、後半の大事な話の布石になっています。ここをしっかり味わって先へ読み進めると、4章から「来た来たー!」という展開にワクワクすることと思います。
 私は最後まで読み終わって、勇気をもらい、予想通り13歳ホームスクーリング中の息子に読んでほしい本でした。盗み読みをしてくれたらいいなと願いつつ、本棚の目線の高さの段にねじ込みました。
 ちょうど途中まで読んでいた自分の専門の方の本でも同じような話が「ギブの文化とゲットの文化」というコトバで展開されてるのを思い出しました。


「投資」と言っても、金儲けだけじゃない。「発達」と言っても唯一の正しい道筋や正解がある訳じゃない。どちらの話もクリエイティブであることが出てきます。芸術の話じゃないのにクリエイティブ?これ以上書いてしまうとネタバレっぽいです。本の感想を公開するのは難しいですね。

私自身、コロナ禍の緊急事態宣言からずっと、身辺の事をふりかえり、ほんとに大事なことは何だろうと、自分を見つめざるを得ませんでした。noteも更新できず。文章を書くということ自体についてもいろいろ思いがめぐり、最終的に新年が明けた時点で定期的に執筆の実践をしていこうという決意に至りました。シェアしたり、対話したりしたい。読んだ本で良いものがあれば、伝えてみよう。今、自分にできる事は何だろうと模索していた時に、この本に背中を押された形になりました。
ぜひ感想、リアクション等ください。

 

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