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李信恵さんが高島章弁護士を提訴した民事訴訟で気になったこと

 ツイートが名誉毀損に当たるとしてフリーライターの李信恵さんが高島章弁護士に慰謝料を求めて訴訟を提起した民事訴訟は、大阪地方裁判所で高島章弁護士に88万円の金員の支払いを命ずる判決が言い渡され、高島章弁護士が大阪高等裁判所に控訴していますが、この民事訴訟では気になる主張がなされていました。

李信恵さんが大学院生リンチ事件の加害者である旨の高島章弁護士のツイートに対する李信恵さんの主張

 この民事訴訟では、高島章弁護士がツイートした李信恵さんが大学院生リンチ事件の加害者である旨のツイートの法的評価が争われていました。リンチ事件の加害者である旨のツイートが李信恵さんの社会的評価を低下させることは明らかで、その点について、裁判所が認めたことは誰もが予想することができるものでした。李信恵さんが加害者である旨のツイートが真実であるか、また真実であると高島章弁護士が信じたことに客観的相当性があるかが争われることになったのも想定内であるといえるでしょう。
 高島章弁護士の真実性と真実相当性の主張に反論する形で李信恵さんが提出したのは大学院生リンチ事件に関する民事訴訟の判決文でした。ここには、リンチ事件の被害者である大学院生が李信恵さんに請求した金員の支払いが大阪地方裁判所及び東京高等裁判所で認められなかった事実が記載されているので、李信恵さんが反論のための書証として提出することもまた想定内であるといえます。
 ただ、李信恵さんの訴訟代理人である神原元弁護士と上瀧浩子弁護士は更に念を入れて書証を追加していました。それは、大学院生リンチ事件の音声の文字起こしでした。結果として李信恵さんが大学院生を殴打していないと大阪地方裁判所、大阪高等裁判所で認められた際に提出されたものどあるため、書証として提出するのもまた想定内であるといえます。ただ、想定とは違ったものがあったこともまた事実でした。

李信恵さんが被害者を思いやった発言はなぜ付け加えられなかったのか

 大学院生リンチ事件で被害者である大学院生が現場から戻ってきたとき、李信恵さんは

「殺されるんやったら、入ったらええんちゃう」

と声をかけたことが録音された音声で明らかとなっています。それに対して、大学院生リンチ事件と今回の民事訴訟で、しかも当事者と訴訟代理人である神原元弁護士と上瀧浩子弁護士も同じというシチュエーションであるにも関わらず、次の当事者尋問の内容について触れられることがなかったのです。

上瀧浩子弁護士(以後「上瀧」)「それから、あなたは殺されるんだったら入ったらいいんちゃうのの後に何か言っていますよね。音声が残っているんですけれども、録音はされているけれども反訳には行っていないんですが、何て言ってますでしょうか」
李信恵(以後「信恵」)「寒いからと言っています」
上瀧「どうして寒いからって言ったんですか」
信恵「12月で真冬だったので、外にずっといたら風邪をひくんじゃないかと思って、そう言うけりがつかないんだったら、中に入ってた方がいいんじゃないかなと思って言ったと思います」

 李信恵さんのこの発言は、「殺される」という過激な表現を和らげるものであるとともに、年長者が年下の者を思いやって声をかけたことを立証するもので、この民事訴訟では欠くことができないものだと私は考えるのですが、どうして彼らはこの発言に触れることがなかったのでしょうか。音声を調整してクリアにすると

「(聴き取り不明)みたいに」

と聴こえることと関係があるのかも知れませんし、この部分に触れなくても民事訴訟に勝つ見込みがあるとか、この部分に触れると民事訴訟が不利になるという何らかの判断があったのかもしれませんが、上瀧浩子弁護士と神原元弁護士はどう考えて触れなかったのでしょうか。