横浜地方裁判所管内暴行被疑事件及び大阪市北区堂山町傷害被疑事件第1回公判 1
裁判長裁判官 奥山豪
裁判官 中山登
裁判官 北川斉佳
書記官 吉田伸也
検察官冒頭陳述
北島直樹被告人と伊藤大介被告人の前科前歴の有無、前科前歴がある場合にはその罪名について触れるという定型的な陳述が行われました。なお、被告人の前科前歴の有無、前科前歴がある場合の罪名については、被告人のプライバシーを尊重して、前科前歴がある場合はもちろん、前科前歴が無い場合においても一切触れないこととします。
事件に関する検察側の主張及び弁護人の主張
検察官「平成30年10月16日、茅ヶ崎市の市民文化会館内で行われる映画上映について、被害者渡辺賢一が同日午後0時55分ごろ建物内に入ろうとしたところ、北島直樹被告人、伊藤大介被告人が同人の腕を掴み、北島直樹被告人は同人を後ろから羽交い締めにし、押したことによって同人が階段から転落したものである。
令和2年12月23日起訴の事件については、伊藤大介被告人が11月24日に友人と飲食をし、翌25日午前0時0分ごろに丁(ジクス)とともに荒巻靖彦が経営するバーを訪れたところ、バーは定休日だった。そこで同日0時42分ごろに荒巻靖彦を電話で呼び出し、1時19分に大阪市北区堂山町の路上で荒巻靖彦と会い、荒巻靖彦は護身のために折りたたみ型のナイフを持参して見せびらかしたため、丁が掴んでナイフを落とさせ、丁が馬乗りになり、顔面を殴り、荒巻靖彦は気絶した。その後も伊藤大介被告人は、気絶した荒巻靖彦の顔を踏みつけるなどし、荒巻靖彦は全治2週間の怪我を負ったものである」
裁判長「弁護人は冒頭陳述を行ってください」
神原元弁護士「弁護人の神原から申し上げます。
茅ヶ崎の事件におきましては、北島直樹被告人については、
渡辺賢一の腕を掴む
羽交い締めにする
転落させる
という事実を検察は主張していますが、腕を掴んだことについては認め、それ以外については否認いたします。渡辺賢一の転落については、渡辺賢一自身が足を踏み外したものであります。
伊藤大介被告人については、
腕を掴む
押す
転落させる
のいずれについても否認します。
映画上映については、妨害がなされるのではないかということで警察官が多数配置されていましたが、映画開始が14:00で13:00ごろには配置が十分ではありませんでした。そこに渡辺賢一が茅ヶ崎市市民文化会館内に侵入しようとし、被告人らは妨害者の不正な侵入を防いでほしいとの依頼を受け、表現の自由を守るために対応したものであります。そのため妨害行為に対する必要性を満たしておりますから正当防衛が成立します。また、映画上映という表現の自由の妨害という現在の危険がありますから、緊急避難も成立します。また、被告人らは映画上映を静穏になすという依頼を受けており、渡辺賢一の行為によって現在の危険が生じておりますから、正当業務行為でもあります。したがって被告人らに故意はなく、無実を主張いたします。
12月23日起訴の事件についてですが、状況として被害者とされる荒巻靖彦と伊藤大介被告人、丁(ジクス)が対峙し、被害者とされる荒巻靖彦がナイフを見せびらかしながら丁を激しく殴ったことから、丁は被害者とされる荒巻靖彦に馬乗りとなって殴り、伊藤大介被告人もまた被害者とされる荒巻靖彦を殴ったものであります。被害者とされる荒巻靖彦はナイフを持っており、丁の身体を守るためでありましたから、伊藤大介被告の行為には正当防衛が成立します。また、途中で被害者とされる荒巻靖彦が気絶していたとのことですが、被告人らはそれに気づいていなかったため、正当防衛が成立しなかったとしても誤想防衛が成立しますので故意を欠き無罪です。」
裁判長「今回、弁護人から弁第18号証が提出されていますが、検察のご意見はいかがですか。」
検察官A「弁第5号証、弁第16号証については、同意します。弁第17号証については、不同意です。弁第18号証については同意します。」
裁判長「弁第7号証については写しですか。」
神原元弁護士「はい。」
裁判長「これまで検察は弁第7号証、弁第11号証から弁第15号証まで同意していましたが、新たに弁第5号証、弁第16号証、弁第18号証について同意するということですね。」
検察官A「はい。」