改めて、専門家として知的障害について考えてみたー第3話
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今日はnoteの連続更新114日目です。
noteのほかに、Voicy(音声配信)もしておりますので、ぜひ併せてご活用ください!
さて、今日は先週書いた「改めて、専門家として知的障害について考えてみた」の第3話をお届けします。どうぞお付き合いください。あ、できれば第1話、第2話もお読みいただける方がより理解しやすいかなと思うので、そちらもぜひ!
これまで、「IQは大事な情報の一つだけれども、それがQOLに直結するわけでもなく、支援ニーズがわかるわけでもない」ということを書いてきました。
じゃあ、IQの意味って薄いの?
とはいえ、そんなこともありません。
よくある誤解として、「会話ができるなら、知的障害じゃない」と言われることがあります。そもそも、「知的障害=うまく会話ができない」みたいな誤解があること自体も問題なのですが。会話できる人って、たくさんいますから。
ただ、もっと大きな問題は、周囲から「実は困っている」とか「すごく努力している」ということに気がつかれにくくて、何か不都合があった時に、結果として「本人の問題」みたいにされることがあります。
そうした時には、ご本人のやる気や努力不足の問題ではなくて、知的能力の困難が関係していることをお伝えするのですが、その時にはやっぱり客観的な指標がある方が説得力が増すなと、日々感じています。
じゃあ、IQが高い場合にはやる気とかの問題に…?
ぼくはよく知能検査を実施させていただく立場です。
その立場からすると、IQには意味がある一方で、検査でわかるのはIQだけじゃなく、むしろ支援プランを考えるためには、数値には表れていないIQ以外の情報が大切だったりします。
むしろ、そこに生活上の困難の背景があったりします。
例えば。
検査の中に「ワーキングメモリー」というものを測るものがあります(専門用語は嫌ですね。すみません💦)。
イメージしやすさ重視で、すごく雑に説明すると「聞き取る力」みたいなものです。
でも、「この数値がすごく高い=聞き取る力が高い」とは限らないんです。
逆に、「数値が高いのに、聞き取ることは苦手」ということがあります。
そこが説明できないと、「数値が高いのに聞き漏らしがよくあるのは、本人のやる気の問題だ!」みたいな話になってしまうんですね。
いやいや…え?どういうこと?
すごく矛盾していますよね。でも、こうしたことを見極めることが、ぼくら検査者に求められることなんです。
数値上は聞き取りの結果は良いのに、実際には聞き取ることは苦手な場合もあり、そうなると聞き取りが苦手なことを前提とした支援プランになるわけです。
…意味がわからないという人もいるかもしれません。
詳しく語るとキリがないのと、話がどんどん逸れるのでこれ以上は触れませんが、要は、「誰が検査を実施するかで、そこから得られる情報はかなり違う可能性がありますよということです。
検査はIQを出すためではなくて、支援のために実施するものです。
検査は誰にとっても少なからず負担がかかります。そして、ご本人やご家族が知りたいのは「数値」ではなくて、「どうサポートすればいいのか」です。でも、検査者によって、そのサポートの提案が全く違ったりするわけです。
それ、おかしくない?
そんな風に思われることもあると思います。
もちろん、それは検査者側の責任です。
「支援のための検査」になるためには、検査者の知識や技術や責任が問われます。だからこそ、ぼくらは勉強しなければならないのですが、これについては今回のテーマとは逸れるのでこの辺で。
あ、なので検査結果を聞くときには数値だけじゃなくて、「じゃあどんな支援がいいの?」ということ、そしてその根拠を聞くようにしてみることをお勧めします。
今回は、「知的障害と適応行動」について書こうと思っていたのですが…検査という自分の専門領域に少し寄せてしまってついそのことだけ書いてしまいました…。
ということで
今回書こうと思っていた内容は第4話に持ち越しです。
補足はVoicyの配信をお聴き頂ければと思いますので、宜しければVoicyの方も応援していただければと思います!
佐々木康栄
災害時に役立つさまざまな情報
被災地で、発達障害児・者に対応されるみなさんへ(国立障害者リハビリテーションセンター)
防災・支援ハンドブック(日本自閉症協会)
災害時、発達障害の子どもの支援についての医療関係者へのお願い(内山登紀夫先生)
災害時の発達障害児・者支援エッセンス
#障害者を消さない(ヘラルボニー)
寄付型セミナー(TEACCHプログラム研究会東北支部)
代表を務めているTEACCHプログラム研究会東北支部で、「寄付型セミナー」を立ち上げています。ぼくの衝動的な行動であることは自覚しています。それでも、今ぼくらにできることを考え、過去に配信したオンラインセミナーを再度配信させていただき、その売上(配信や販売に関わる手数料を差し引いた全額)を能登半島地震の支援・復興に向けた寄付することに決めました。宜しければ応援してもらえると嬉しいです。
#能登の障害者に届け
能登の障害者の方々に直接支援が届くように、一般社団法人障害攻略課さん
、NPO法人石川バリアフリーツアーセンターさん、一般社団法人Smart Supply Visionさんが「#能登の障害者に届け」というプロジェクトを立ち上げてくださっています。
この短期間でこれだけの状況を整えることは、どれだけ大変だったのだろうかと思います(きっとかなり睡眠時間や休みの時間を削って急ピッチで取り組んでくださったのだと思います)。本当に感謝です。
一緒に応援しませんか?
その他お知らせ
オンラインサロン「みんなで考える発達障害支援」
クラウドファンディング
▼9月に大阪にて講演会をさせて頂いた「一般社団法人泉大津・発達支援勉強会Lien」さんが、「大阪府泉大津市、及び、泉州地域である近隣市町村一帯が、発達障がいや多様な子どもたちにとってより過ごしやすい地域に」を目指して、クラウドファンディングをされています。特に、4月2日の世界自閉症啓発デーでは、世界中がブルーライトアップされます。これは色々な人に目を向けてもらうための活動でもある一方で、それだけ予算がかかります。
そのため、どの地域でもできるわけではありません。今回、泉大津市内のブルーライトアップをしたい!という想いを叶えるためのクラウドファンディングです。目標金額は220万円です。ちなみに、これは行政と一緒に取り組んでいるものなので、「ふるさと納税」として寄付ができます。
ぼくも応援メッセージを出させて頂いています。どうか皆さんも応援していただけないでしょうか。
皆さんの応援が力になり、その力が地域を進める行動になり、その行動が当事者やご家族の未来になります。
一緒に地域の未来を変えるお手伝いをしてくれませんか?
セミナー情報
▼TEACCHプログラム研究会 第16回実践研究大会 in 東北・東京・熊本・鹿児島 「共に学び 成長する 熱い冬」
ぼくは仙台会場にいって、一丁前にコメンテーターというのをさせて頂きます!翌日にはTEACCHプログラム研究会東北支部主催でイベント「自閉症支援の未来会議 in 仙台」も開催しますので、2月10日(土)、11日(日)はご予定の確保をお願いします!
▼会員限定動画▼
これまで、会員の皆さんには限定のコラムや動画を配信してきました。現在下記のような動画を配信中です。閲覧にはパスコードが必要です。何度かメールでご案内しておりますが、もし会員の方で「パスコードがわからない!」という方はteacch.tohoku@gmail.comまでご連絡ください。
▼会員限定コンテンツ▼
現在、会員限定の質問フォームを設けています。匿名にしようかとも思ったのですが、会員の方からのご質問であることを確認するためにお名前のご記入をお願いしたいと思います。ご質問については、全てにお返事できるわけではなく、会員の皆さん全体にとって有益だろうと思うものを中心に取り上げて、限定コラムなどで書いていきたいと思います。
▼その他▼
ここに記載した以外にも、東北支部ではさまざまな取り組みを今後もしていきます。会員の皆さんには、「今こんなことを考えています」というのもお届けしますのでお楽しみに。公式LINEもあり、会員以外の方もぜひご登録ください!定期的に情報発信していく予定ですので、「TEACCHって何だろう?」「興味はあるんだけれども、どんな活動をしているんだろう?」という方はぜひご登録ください!
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