『日本の色辞典』吉岡幸雄 | 紫紅社
本書は横須賀の古書店で家人が見つけた一冊で、店主があまりに愛した辞典ということで、新本という形で売られていた。吉岡は日本に生まれてきてよかったと感じさせる数少ない先人のおひとりであるが、この本もまた我が國で育てていただいてよかったと素直におもえる一冊になる。
ところで、出版社の紫紅社は昭和48年に吉岡が設立された美術工芸図書出版で、その名からもわかる通り、色のなかで紫を吉岡は最も愛した。そのドキュメンタリーは映画になっており、そのタイトルもずばり『紫』である。
こちらは過日、治療家の浅井俊介が貸してくれたもので、私の胸椎のノイズをとってくれながら、「これが平安の色だよ」と渡してくれたのである。ちなみに浅井はこれを映画館で觀たそうであるが、客はひとりだけであった。おそらく最前列の左隅っこで満足氣に觀ていたとおもわれる。
兎にも角にも、白川靜の『字通』とともに、全國民必携の辞典であろう。
我が國から色が消えて久しい。無論、色氣もとうに褪せている。その理由は比喩ではなく、物理的に日本の色がなくなっていったからではなかろうか。逆に、また我が國の華を染め直すには、私たちが古き眼で色を觀るに限る。
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