日本一ちいさな蜜柑なるものが我が家にやってきた。たしかにちいさいが、もともと自然の蜜柑はこの程度の大きさであったという。いつもなら余計な品種改良をしたために、不自然な肥大化が起こったと難癖をつけたであろう。しかし、大きな蜜柑で育ってきた身としては、今更戻れぬというのが本音である。

過日、素朴な鳥居のまえに夫婦だろうか、二羽の鳩がいた。こちらを氣にしつつも、ずっとその場を離れなかった。大地の呼吸を教わるのは概してこのような靈鳥からで、鳴き声に耳を澄ませば、呼吸を自然に引きよせてくれる。おそらくご先祖様の叡智も樹々の根から足を介して教わったものが大半であろう。

援農で農家に伺う機会を少なからず頂戴している。感じるのは自分たちで食べるものは自分たちで育んでいく大切さと、我が國の自然のたしかさである。土の匂ひ、鳥の囀り、花の儚さ等、まだまだ私たちの傍らには自然が在る。SDGsとして頭で自然を守るのではなく、まずは裡なる自然に氣がつくことだ。