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高堂つぶやき集。
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2024年2月の記事一覧

過日は熱海に仁清を愛でにいった。裏手に光琳の屏風があったお蔭で、人はそちらに流れ、休日ではあったものの、随分と壺を堪能できた。昨年末、某大企業の社内研修で茶道をお傳えしていた際、茶碗と水指を仁清の写しにしたこともあって、最近は焼物に傾いている。やはり昔の方々の仕事はたしかで佳い。

森羅万象凡てに源はあるものだが、河津櫻の場合、原木は或る民家の庭にある。はじまりの櫻だけあって、その幹は太く、花は大きい。そして、開花がいちばん早い。人よりも櫻が多いこの街を眺めれば、川沿いの並木は觀光地に堕してしまってはいるものの、何処かホッとするものがあり、額の裡が花ひらく。

二十代、私は木に輪廻転生している聖者が多く居るだろうと信じてきたので、たしかな木に触れては上空の枝を見あげてきた。三十代、足裏を耳にして、根から情報を得るようになった。つまりは下を向くようになった。四十代、私は木の内側から木を觀るようになり、ついに私が木であったことに氣がついた。