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男に生まれて

トランペットの練習をする。

練習と言っても課題曲をやるワケではなく(練習曲はあるが)主に基礎練習であり、筋トレみたいなモンである。
その際にNetflixでアニメを見ながらやっている。

ある程度、雑音がある方が集中出来ると言うか。

で、アニメを見ていると
「アニメって、こう言う世界なのか・・・」
と言うか、何と言うか

①男女共学の校風
②何故か主人公はモテる
③ヒロインの子は絶世の美女でモテる
④変人でもモテる
⑤初恋はレモン味

と言う世界観。

私事で恐縮だが、私は『男子校』出身者である。
『玄界灘の荒波を/西に眺むる/とのえやま/麓に建てる/我が校舎/見よや/豊国学園に/集える学道2,000人』
と校歌からして男らしい歌である。

私の出身校の特色は『男らしく』であり、制服は真冬でも

『鉄下駄』
『ねじり鉢巻』
『六尺褌』

だけだった。テストの際は『鉛筆』『シャープペンシル』等という女々しい、子供だましのようなモノは用いない。

『血文字』

である。先生が「開始!」と言った途端に全生徒がカミソリ、または自前の日本刀で指先を切り、それで書くのである。
虚弱体質な学友は、テストが終わる頃には貧血で倒れていた。
真夏には血の臭いで教室が凄まじい臭いになっていた。
何しろ国語だと矢鱈とが画数が多い文字を多用するモノが多かった。

『薔薇』
『醤油』
『憂鬱』
『綺麗』
『檸檬』
『魑魅魍魎』
『麒麟』
『驚襲籠』

等の漢字を原稿用紙5枚も書くのである。
テスト前は皆で『スッポン』を食べて挑んだモノである。

そんな『男しかいない』と言う思えば特種な校風なので全生徒の憧れは

『男女共学』
『初恋はレモン味』
『ヒロイン』
『脱!童貞』

だった。今のようにLGBTBXが市民権を得ている時代でもないのでゲイ方面に行くのは無理だったし、そもそも保守的な地域でゲイと言うのは考えられない事だったし、そもそも私は『羽生結弦』『BL漫画』『ゲイ小説』『クィーン』『ディーク・エリントン』を好むが、ゲイではない。
ゲイの方から痴漢を受けた事があったが。

そんなワケで
「嗚呼、中学時代にもっと勉強して、男女共学の高校に通えたら人生が違っていたかもな・・・」
と今でも思う。

恐らく、楽器と言ってもトランペットではなく『ギター』『ピアノ』だったかも知れない。
ギターだとかピアノなんぞで

「梢江ぇー!!ボクの気持ちはー!常にー!ウルトラMAXでー!L・O・V・E!Splash Joy!」

等と歌っていたかも知れない。間違ってもターテーブルでテクノDJなんて言う、思えばキモヲタ童貞クソ野郎にはなっていない・・・と思う。

私は男女共学高校を知らないので全く想像が付かないのだが、恐らく

①高校の校舎の屋上で男女共々、仲良く(最近は自殺防止の為、屋上は封鎖されているが)。
②何故か私に視線を向けてくる女子がいる
③私は鈍感なので気が付かない。
④「馬鹿!鈍感!」とか罵られる。

等があろうかと思う。

夏休み前に二人で歩いていたら(多分、下校時)突然、豪雨となり雨宿りをする。
その際に何故か私の家が近かったので、家に上げる。
「ほらよ」
とバスタオルなんぞを貸して、私のTシャツなんぞを貸すのである(嗚呼!こうやって書いているだけで顔がニヤけてくる程、素晴らしいシュチュエーションだ!)。

雨が中々、止まないので、どうでも良い将来の夢なんぞを語ったりするのである!

「ねぇ・・・KO.DO.NA君は将来、どうなりたい?」
「うーん。考えた事ねぇな(何故か方言ではなく標準語だ。青春に方言は不要である)・・・取り敢えず進学かなぁ・・・。梢江はどうするんだい?」
「うーん。私もあんまり考えてないなぁ・・・。オウム真理教事件もあったし、阪神・淡路大震災もあったし、ソビエト連邦も崩壊したし。進学よりもマルクス・レーニン主義による暴力革命と永久革命がどうなるのかなぁ~?って思う」
「マルクスかぁ。梢江は難しい事ばっかり考えてんなぁ」
「そ・・・そんな事ないよ。だって、KO.DO.NA君だってニーチェ主義による新しい階級制度の事ばっかり考えてんじゃん」
「え・・・?なんで知ってんの?」
「だって、授業中、いっつも『ツァラトゥストラはかく語りき』とか『力への意志』ばっかり読んでるでしょ!」
「あっはっは。バレてたかぁ」
「図書館でもヒトラーの『我が闘争』ばかり借りてるし。うちの学校で『我が闘争』とかワーグナーを借りてるの、KO.DO.NA君くらいなもんよ。たまには『ロラン・バルト』とかモーツァルト・・・聞いてる?」
「フッフッフ。おかしいなぁ。でも、梢江は何故、そんな事を知っているの?」
「別に・・・別に良いじゃない!私、図書委員だし!あんたに興味があるわけじゃないんだからね!」

と言う、甘酸っぱい、クソ甘酸っぱい・・・酸味が強すぎてレモンどころか『シュールストレミング』のような酸っぱい会話をするのである!!!
嗚呼!こうやって書いているだけで顔が赤面してくるほど、甘酸っぱい!
初めて『クサヤ』を食べた時のような胸の動機!!!

失われた3年間はかくも重い!!!

で、16歳か17歳になったら同級生を相手に

『親が法事で居ない時』

に童貞を失うのである!勿論、相手は処女である!そう、

『処女&童貞』

こそがギリシャ-ローマ帝国、いずくんばイタリア-ルネッサンス的な黄金比率なのである!

あ、因みに同級生の女子の夏の私服は

「白いワンピース」

に決まっている。麦わら帽子もあれば最強である。

『白いワンピース』

『麦わら帽子』

『サンダル』

は童貞界隈では『三種の神器』と呼ばれ、誉れ高いモノである。
昭和天皇はラディカルな人物であり、恐らく天皇家史上、初めて天皇が『天皇』を疑った人だと思う。
それを思うのが、昭和天皇が皇太子時代かもしれないが

「三種の神器と言うモノを所有しているのであれば見せてくれ」

と迫った、と言う話である。因みに見せて貰えなかったが、そんな事を言ったのは昭和天皇と言う鬱屈、屈折、歪んだ天皇だったからだろう。

天皇ですら見る事が出来なかった三種の神器。
だから、童貞界隈や男子校界隈では「三種の神器」と呼ばれながらも見た事がある人物が殆どいない、と言う非常に稀な存在である(ネッシーよりも貴重と言われている)。

雨に濡れた女子(同級生)の透けたブラジャーを見て「う・・・!」と思うのが男女共学高校である。

あと、クリスマスである。
女子から

『手編みのセーター』
『手編みのマフラー』

をプレゼントされるのである。

『手編み』だぞ?!『手編み』!!!
手芸好きとは言え、毛糸は弄った事がないのだが、セーター1着にどんだけ時間が掛かるんだ。
ふざけんなよ!男女共学!
男女共学だったら、冬の衣服代が浮くって話じゃねーかよ!
男子校は土方や強盗、恐喝、恫喝、スリや引ったくりをして、漸く『靴下』を買えるっつーのに、この経済格差は何だ!!!!????

男子校では、「将来、どうする?」みたいな会話はない。

スタン・ハンセン曰く「男同士の会話はリングの上だぜ」であり、そもそもクソ童貞のアホ男同士で何を語り合うと言うのだ。

「なぁ、ジャブっち、どうやって打つん?」

「そらぁ
攻撃の突破口をひらくため
あるいは敵の出足を
とめるため
左パンチを
こきざみに打つこと
このさいひじを
左わきの下から
はなさぬ心がまえで
やや内角をねらい
えぐりこむように打つべし
せいかくなジャブ三発につづく
右パンチはその威力を
三倍に増すものなり
やけん」

「ふーん。ほうやったら右ストレートっち、どうやって打つん?」

「ほんやったら
左ジャブで敵の体勢をくずし突破口を
見いだせばすかさず右ストレートを打つべし。
これ、拳闘の攻撃における基本なり。
右ストレートは右拳に全体重をのせ
まっすぐ目標をぶちぬくように打つべし。
このさい、打ったコースと同じ線上を
同じスピードでひきもどすこと。
一発でKOをうむ必殺パンチなり。
やけん」

である。

男女共学高校は『標準語』で語り合っているのに、男子校は『方言』である!

この落差と階級!

インドのカースト制度も裸足で逃げ出す階級制度である。
恐らく・・・おお・・・神をも恐れぬ所業だが、男女共学高校は

『男女で自転車二人乗り』

等と言う違法行為をしているのである!!!学生の本分は勉強だと言うのにだ!!!。

私が通っていた豊国学園高等学校は男子校であり、自転車などと言う女々しい、子供だましのようなモノは使わない。

『大八車』

である。そこに何故か鉄クズを乗せて門司駅から山の麓の高校まで通うのである。鉄クズは北九州市が誇る『八幡製鐵所』から出たモノであり、その鉄クズの重さが、重ければ重いほど、HIPとされていた。
生徒会長ともなると、鉄クズの重さは1トンにもなった。
生徒会長たるもの、他の生徒の見本とならなければならない。

真冬の雪降る登校中。

ねじり鉢巻に六尺褌だけで、身体から蒸気を出しながら、砂利道の永遠とも思えるほど長い坂道を登る姿!!!これぞ男の中の男である、マンの中のマンだ。
だが、意味もなく鉄クズを積んだ大八車を引っ張る姿と
『甘酸っぱいレモンの初恋』
は余りにも相性が悪い。

大体、男子校が特種過ぎるのである。

通学の定期券を申請する為に事務室に行くのだが、其処に唯一、20代の女性が働いていた。

定期券を申請するたびにドキドキしていたモノだったが、それが1990年代の話か?
俺なんて髪に櫛を入れて行っていたんだぞ?。学友は顔を洗っていた程である。
全く意味不明だ。

思えばクラブなんぞに夜な夜な通っていたのも「失われた3年間」を取り戻す為だったし、DJをやっていたのも、その延長である(純粋に音楽が好きだ、ってのもあるが)。

だが、どう考えても「あの時、男女共学高校だったら・・・」と考えてしまう。だとすれば、今では

①高校時代に3つしかコードを知らなかったギターは『近隣の迷惑』と言う事でウクレレに変えている。
②呑むとウクレレを弾き始める。
③浜省吾やサザン・オールスターズのライブに行っている。
④やや肥満
⑤Googleで働いている。
⑥使用しているPCはマッキントッシュ。
⑦レクサスに乗っている。
⑧クリスチャン・ラッセンの絵を飾っている。
⑨スタンド・カラーのシャツを着ている。
⑩嫁は同級生。
⑪創価学会員
⑫アムウェイ・ビジネスで儲かっている。

と生産性のある生活だったに違いない。男子校生の「その後」は

退廃
後退
敗退
堕落

でしかない。

嗚呼・・・男女共学高校であったならば・・・クソみたいなアニメを見ながらTPの練習はせずに・・・と言うかTPじゃなくてフルートを吹いていただろうに・・・。

10代の『失われた3年間』は重い・・・重すぎる。

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