【読書記録】プロだけが知っている 小説の書き方
書く仕事についていろいろな本を読んできたけれど、ライターさん向けが多かったなぁと振り返りました。こっちの本は、小説家さん向け。この本の作者、森沢明夫さんの作品はあまり知らなかったので、何か読んでみてから実用書を手に取った方がいいかもしれないと思い、
これを読んでみました。なんか、ほっこりする作品でした。
それでは「小説の書き方」、つまり裏側を見ていこうかと思います。
ここまでバラして大丈夫?
担当編集者さんに、まじめに心配されたそうです。こんなに内情をバラしたらライバルが増えてしまう(笑)それでも、森沢さんは言うのです。
作者は、小説を「魔法の乗り物」と定義していました。なぜなら、読者の心を乗せて空想の世界のどこへでも飛ばせるから。スティーヴン・キングは確か「テレパシー」に例えていたのを思い出します。
とにかく、「魔法の乗り物」でも「テレパシー」でも、あなたの紡ぐ言葉で読者の脳をハックしてしまう技術がここに詰まっているのでしょう。
さっそく構成から見ていきます。
STEP1 ネタを考える
ここには、12個の質問の答えが書いてありました。全部書くとネタバレなので書けないのですが、「Q1.ネタがひらめきません。」については、メモしておきます。ここで詰まっていたら小説書けませんからね。
作者の答えはズバリ!あなたの周りにいくらでもある!でした。そんなこと言われても……って声が聞こえてくる解答ですよね。でも、きちんと説明してくれています。
もちろん、そのまま使ったら相手に迷惑がかかるので、このネタをもとにあなたが膨らませていけばいい。
不幸か。そっか、人の不幸は密の味っていうもんな。みんな、「実はそこを見たい」って思うからこそ、この演出がマストなのかぁ。勉強になります。こういう裏側を知っていくと、小説の読み方が変わっていきそうで怖いですけどね。(あぁ、主人公の不幸は今回○○だって思いながら読むのか)
STEP2 設定を考える
ここには、9個の質問がありました。その中の1つをピックアップします。
「Q16.登場人物の性格がどうしても同じようになってしまいます。個性を出すにはどうしたらいいですか?」という質問がありました。
少年マンガの「僕のヒーローアカデミア」ではそれぞれの個性をもったキャラクターが登場していますよね。あれはマンガやアニメだからできるのでは?小説だったらどうやるのでしょうか。
作者の答えは、キャラクターに「長所」と「短所」を持たせて。でした。
作者は、ヒロアカではなく少年マンガ「ONE PIECE」のルフィで例えていました。長所は、ゴム人間で、強く、豪胆で、優しく、心が広い。短所は海賊なのに泳げない、思考が短絡的、情にほだされやすい。
作品を作り上げるとき、どのキャラクターも自分の分身のようでかわいいものでしょう。この分身の陰と陽のそれぞれの力をうまく描いて、自分事に感じてもらえるような仕掛けをちゃんと考えているってことですね。戦略的だし、作者自身が人間心理をよく知っていないと書けない気がします。
尊敬されやすい長所と、愛されやすい短所のバランス感。
STEP3 プロットをつくる
ここは、13個の質問がありました。その中の1つ「Q25.思わず先を読みたくなるような物語を書きたいです。プロットをつくるうえで注意すべき点などはありますか?」を見ていきたいと思います。
先を読みたくなるような物話。私も創ってみたいです。経営をしている方なら、自分の人生をおもしろくストーリー化してもいいですよね。
作者の解答は、キャラクターと読者に「謎」を追わせて。でした。
「謎」とは、ミステリーって事でしょうか?
ミステリーというか、この先が気になるっていう感じを持続させていくんですね。ただ、これって難しくないですか?作者はどうやって創っているのか気になります。森沢さんの本「虹の岬の喫茶店」だったら、そこに集う人たちの過去のいろいろが解き明かされていくような書き方でした。
作者が大切にしてる3つのことは、
さらっと、すごいことをおっしゃっていますよね。伏線をはるって感じでしょう。推理小説の謎が解けない私は、ここでリタイアしそうです(笑)
STEP4 原稿を書く
ここが一番長く書かれていました。〝読ませる〟12個の質問と、〝書くことに詰まったとき〟の6個の質問がありました。人物描写や情景描写の質問も気になりますが「Q44.調べた知識をそのまま使うのはまずいでしょうか?うまく小説に取り入れる方法を教えて下さい。」について読んでいきます。
作者の解答は、他者から得た知識は「食材」で、それを「料理」するのはあなたです。
よい作品がうまれるまでに、作者のわくわくと同時に、大変さが垣間見える答えです。書くってそれだけでも結構大変なのに、その上体感まで追求しているなんて。
ふと思いだします。ただ今夏休み期間中。毎日家族のためにお茶とご飯を作り続けるループをしている主婦の私。数多くの「簡単レシピ」という知識を得た所で、料理をするのは自分しかいません。アツアツのお鍋を前にしてキッチンに立ちます。まさに料理する楽しみ(と苦しみ)を味わっています。
きっと、小説の原稿を書くというのもこんな感じなのでしょう。
STEP5 推敲する
ここは、9個の質問が掲載されていました。推敲ってちょっと苦手意識があります。自分の文章を読み返すのって、なにか抵抗があるのは私だけでしょうか。そんなこと言っていたら、読者さんに失礼ですね。
あぁ、同じような質問を発見しました。「Q56.推敲が大切なのは分かるのですが、苦手です。作業が面白いと思えません。」
お答えください、森沢先生!
作者はつぶやきました。
クオリティを上げたくないなら、やらなくていいけどね……。
あぁ、なるほど。そういうことですね。日本のキャラ弁を作っているのと同じことですね。朝早くから、海苔で表情を作り、おにぎりを形を整えて弁当箱にきれいに詰めると。子どもが食べるのは一瞬なのに、凝って作るあの技術が推敲なのでしょう。……ん?
やっぱり、めんどくさいからいつもの弁当でもいですか?
森沢さんは、いつもの弁当でもいいよって言ってくれました。
でも、何か腑に落ちません。
もしかしたら、私も素敵なキャラ弁を作りたいのかもしれません。たとえ、一瞬の命だとしても。じゃなければ、「プロだけが知っている 小説の書き方」なんて本が気にならないでしょう?
「無名」だからこそ
その作品、気になりませんか?
プロットで編集者が泣いたんですって。
私もまだ、読んでいないんです。
じわじわ版を重ねている作品らしいです。
私は、もしかしたら書く人より読む人なのかもしれません。プロの話を聞いて、まだ見上げているだけだから。書くことにストイックさが足りていません。だけど、読みたい本はこうやって、溜まっていくのです。
執筆という、自分にとって楽しいことだけをやって、幸福感を味わう。
こういう時間もまた幸せなのだから。