見出し画像

子どもの権利の講演・ワークショップレポートin岩手県盛岡市(講演アーカイブ 9/25まで無料公開中✨)

≫ スタートは絵本から

 プロジェクトで文を手がけた絵本『ようこそ こどものけんりのほん』が出版されて1年経ったころ。岩手県は盛岡で子どもにまつわる場づくりをしているみなさんが、この絵本を読んで講演とアートワークショップをしてほしいとお声がけくださいました。今年は講演会を担当している代表である長瀬が多忙だったこともあり、ほとんどのお声がけをお断りしていたのですが、絵本をきっかけにお誘いいただくのは、実は初めてのこと。

 「絵本がどんなふうに読まれているのか、生の声が聞けるかも……行ってみましょう」と長瀬はお引き受けすることを決め、絵本を編集した山縣と盛岡を訪れることとなりました。今回はそのレポートを、私・山縣がお届けしたいと思います。

≫ その前にちょっと絵本のこと

現在出版されている、プロジェクト発の絵本たち

 その前に(ご存知の方も多いかもしれませんが…)ちょっと絵本のお話を。『ようこそ こどものけんりのほん』は、「子どもの権利を知るはじめの一歩になる絵本を作りませんか?」と出版社・白泉社さんに誘っていただいたことで生まれました。文章はプロジェクトが担当、絵はその前に作った子どもの声を聞くワークブック絵本『きかせてあなたのきもち 〜子どもの権利ってしってる?』(ひだまり舎刊)の原画展を、運営する子どもの本専門店で開催してくださったというご縁のある絵本作家・えがしらみちこさんが担当。最初は雑誌の付録として発売され、その時いただいたたくさんの読者からの疑問や切実な声(主にお母さんからのものでした)を参考に、さらに加筆し単行本化された絵本です。

 この絵本を読んだ、のっぽのっぽの日脇春香さんがプロジェクトにメールをくださったのが始まりでした。

≫ いよいよ盛岡でのイベントスタート!

かわいいウェルカムボード

 8月17日、長瀬が単独で盛岡に前日入り。それまでネット経由で丁寧にやり取りを重ねてくださった「のっぽのっぽ」という活動グループの方と初対面します。その夜、盛岡で子どもにまつわる活動をされている方々が集まって交流してくださったとLINEで報告をもらいました。活動についてはもちろん、じぶんの子育ての悩みなども語り合うような温かい会だったそう。

 イベント当日8月18日朝には山縣も新幹線で合流。のっぽのっぽさん(ご夫婦で活動されているユニットです!)のお二人と、助っ人で来てくださった長女さん・次女さん、そして当日スタッフのお仲間たちと一緒に会場準備をし、いよいよ朝10時「みんなで学ぼう! 子どもの権利に関するワークショップ・講演会」が始まりました。のっぽのっぽさんのご尽力でワークショップも講演会も満席! 集まってくださったのは主に、盛岡の子どもにまつわる場におられる大人の方たちです。

駅近くの図書館も入った綺麗なビルの一室が会場
「のっぽのっぽ」の日脇春香さんと隆弘さん。
今回春香さんをはじめとする手話通訳の方が数名入られました。
こちらは長瀬作のコラージュ。
毎年自分のビジョンマップとして作成しているのだそう。

≫ 自分の気持ちを知るアートワーク

 最初は、気持ちをコラージュするワークショップ。このワークショップは、言葉にならない気持ちや気分を引き出し、対話をするワークです。「子どもの本当の気持ちをきくこと」はそう簡単ではないことが多々あります。信頼し安心してもらうことが必要ですし、気持ちを言葉で表現することができない子も多いからです。大人だって、自分の本当の気持ちをなかなかわからないのですから当然です。

 絵本を雑誌で発表したときも、どうやって子どもの気持ちを聞き対話すれば良いかわからないという読者の声が多く、単行本化の際はそのコツを描いたページを加筆しました。その一つが「何かをしながら」という聞き方。お風呂に入りながら、自転車に一緒に乗りながら、二人で絵を描きながら……真っ正面から対峙するのではないリラックスしたムードを作るのがコツの一つなのです。まずは大人である参加者の皆さんに、その時間を体験してもらいます。

 事前に雑誌やチラシなどから、たくさんの写真や絵の 素材を事前に用意しておきます。制作テーマは「あなたが羽ばたくために今必要なもの」。4人ずつくらいのグループに分かれ、まずは簡単な自己紹介タイム。
 その後、今の自分にピンとくるものを、画材コーナーから選んでいきます。台紙は絵本から引用した蝶々の姿をした子どもの絵。その周りに、羽のように思い思いに気分をコラージュをしていきます。

用意していただいたたくさんの素材の中から
今の気分をさがします。素材テーブルは全部で三つ。
どれにしようかな?と迷う時間は
実は自分のこころの色を見つめる時間です
さあ、コラージュの始まりです!

 手を動かして自由にコラージュをするのは大人にとっても楽しい作業です。子どもを手伝うことはしても、自ら工作をするのは久しぶりという方も多かったかもしれません。周りの方とおしゃべりしながら、あるいは黙々と……たくさんのコラージュが出来上がっていきます。

 途中で、他の人がどんな作品をつくっているかを見てまわる「トコトコタイム」がさし挟まれます。

トコトコタイムの様子

 完成の時間が来たら、それぞれの作品についてグループ内で話すシェアタイム。元々コミュニケーション上手な方が多いからか、会話に花が咲いている様子はとても楽しそう。(もちろん子どもと行う時は、発表してもしなくても良い・・が基本です) 

シェアタイムの様子

 最後は見せても良いと言う方に絵を持ちあげてもらい、みんなで作品を眺めます。のびのびした作品がたくさん並んで、にぎやかな空間が生まれました。コラージュはアートで表現する「おしゃべり」。皆さんのおしゃべりが溢れ出しました。これでコラージュワークショップは終了です。みなさま、お疲れ様でした!!

≫ 講演会・私の気持ちと「子どもの権利」

 続いて長瀬正子の講演会。ワークショップの熱気がまだ少し残る会場に、新たな参加者も加わって休憩後にスタート。
 大事なことがギュッと詰まった、充実の時間でした。以前、私が聞いた講演からさらに新しい情報も追加され、「子どもの権利」の黎明期から最も新しい現状までを見渡せる講演だったと思います。

1時間10分の講演のあとは質問コーナーも

\無料のアーカイブ動画はこちらから/ 

 この講演はのっぽのっぽさんよりアーカイブ動画が限定無料公開されており、期間中(~9/25まで)は追加の申し込みを受け付けています。視聴したい方は、Googleフォームから申込みをお願いします。
⚫︎アーカイブ申し込み  👉こちら からどうぞ!!

アーカイブ動画にも手話通訳が入ります
イベント後も、盛岡の子どもに関わるみなさんが、
しばし歓談・交流されていたのが印象的でした
会場には長瀬が紹介する「子どもの権利」を感じられる絵本も展示
「ご自由にどうぞ」のさまざまな資料やチラシも
あっという間になくなり、みなさんの熱心さが伺えました。

 熱気のあるイベントの終了後、運営スタッフのみなさんと数名の参加者の方が残り、子どもの場に関わる方々とランチ会を開いてくださいました。熱意を持って前向きに活動される様々な立場の方が、この地にもたくさんいらっしゃる。お話を伺っていると、困難があっても思いは忘れず、工夫しながら楽しみながら、一歩でも光の方へ進もうとしている方たちが、たくさんおられることが体感されました。きっとそれは全国に……と希望を感じた1日でした。

≫ 絵本にまつわるお話

 そして、『ようこそ こどものけんりのほん』にまつわるお話も聞くことができました!

 一つは、保育士の先生から。最近、ある保護者の方に相談を受けた内容にどう応答したらよいか悩んでいたそうです。子どもの権利にも関係することだったので、ふと思い出して、『ようこそ  こどものけんりのほん』を、ご自宅にお貸し出ししてみたそうなのです。子どもはもちろん、大人も読んでくださった様子。その後にお話するとまた違った結果になるのではとお話されていました。どうなったのかはわかりませんが、そんなふうに絵本が繋ぎ役をしてくれていると知って、編集者として励みになりました。

 もうひとつは、このイベントのきっかけとなってくださった方から。地域で子どものアートラボを主宰され、日々子どもと向き合っておられる方です。
 「子どもの権利」は知っているけれど、実際子どもと寄り添う場にいたら実現はむずかしいよね…と心の中で思っておられた。でもあるとき「ようこそ こどものけんりのほん」を読み「そうか!」と腑に落ちたそうです。絵本のあとがきに「子どもの権利は、なんでも言うことをきくということではない。子どもの声をきちんと聞いて、どうするのが最善なのか子どもと大人で対話することが大事」と書かれていたからです。共鳴してくださり、この本をもっと広めたいと発信されたSNSを見て、春香さんが絵本を手に取ってくださったのです。

≫ ご縁がつながった、のっぽのっぽさん

 7年前まで特別支援学校の教員として長く働き、今は3人のお子さんを育てつつ、この春からパートナーの隆弘さんと、『のっぽのっぽ』を立ち上げた日脇春香さん。子どもたちの体験活動の場や居場所づくりに関わる活動をこれからどんどん発信していかれるそうです。

 絵本を読んで感動してくださり、このイベントを開催することを思いたって助成金や後援を申請、ご夫婦で文字通り奔走してこの素晴らしい会を実現してくださったのでした。本当に感謝しかありません。後援をしてくださった、岩手県、岩手県教育委員会、盛岡市、盛岡市教育委員会、岩手日報社の皆様にも御礼申し上げます。

日脇春香さん

 本はできたあと、制作者の手を離れどんどん育っていく種みたいな存在です。そして、時にこうして還ってきて編んだ私も温めてくれる。ちょっと涙が出そうになる体験でした。

 のっぽのっぽさん、集まってくださった盛岡の皆さん、本当にありがとうございました!

またどこかで逢えますように…

いいなと思ったら応援しよう!