経験から生まれる価値の特性と感性工学について
「経験」から生まれる価値の特性と人間の購買決定の要素である「感性・感情について書いていきます。
学問の分野では「感性工学/感性マーケティング」と言ったりします。
成功/失敗どちらもですが良質なアウトプットには良質なインプットが必要です。
判断できる材料が多いほど意思決定の際に複数の観点から判断をできるので、いかにして良質な情報を素早くアウトプットして自分に栄養分として定着かできるのかというが重要なわけです。
先週は感性工学/感性マーケティングの基礎となる考え方である、「経験価値マーケティング」について書きました。
おさらいとして説明すると、人間が商品を購入するときに商品スペックなどで購買するのではなく、「体験」を記憶に残して体験から生まれる感動や感情が購買行動に大きな影響を及ぼすというのが、経験価値マーケティングの考え方です。
とは言ってもその経験から生まれる人間の価値の特性とは何なのか、
また購買行動決定要因となる「感性・感情」は何なのか。と言うことについて書いていきたいと思います。
経験からうまれる価値の特性は大きく5つ
前回でも紹介したコロンビアビジネスクールのシュミット教授の提唱を元に紹介していきます。
シュミット教授は経験から生まれる価値の特性を次の5つびに分類しています。
SENSE:感覚的経験価値
FEEL:情緒的経験価値
THINK:認知的経験価値
ACT:行動的経験価値
RELATE:関係的経験価値
これをまとめて、「SEMフレーム」(Strategic Experiential Module)と言われています。翻訳すると、戦略的に使える経験価値の種類って感じです。
では、それぞれが何を意味しているのかを解説していきましょう。
・SENSE:五感を刺激することで得られる経験。
美や興奮、満足を感覚的な刺激を通して訴求するもの。※ティファニーなどがこれにあたる。テーマやデザインなどに一貫性が求められる。「雰囲気が良い空間」などもこれに当たる
・FEEL:「感情」を刺激することで得られる経験。企業や個人がそのブランドのファンになるような戦略を実行する事。交流会のイベントや外部の人間を巻き込むことが多い。※ハーゲンダッツカフェの「かわいい」の様にその時の感情を強く動かすもの。
・THINK:クリエイティブな思考を通して得られる経験。驚愕や好奇心、挑発などを組み合わせて、クリエイティブな思考を促す戦略をとること。Appleなどがこれにあたり、製品特性そのものが顧客に感動を与え強烈な経験として記憶される。※AplleのmacやAirpodsなど。
・ACT:肉体的な行動を通してライフスタイルの変化から得られる経験。行動やライフスタイルの代替的な選択を示唆することで肉体的経験価値を高める。他人との接触や交流などだけでなく、長期的な行動パターンやライフスタイル、習慣などに価値を生みだすもの。髭剃りで有名な「gillette」など。※ヒゲを剃るときに刃を変えるという新しい習慣行動を生み出した。
・RELATE:自分が属する集団や文化との関係性を構築することで得られる経験。顧客の個人のアイデンティティと社会性などがマッチしているかどうか。個人と社会、個人と企業など、自分を中心に外部と結び付けて満足を得れるかどうか。※ジェンダーレスブランドなどのブランドがこれに当たる。
この5つの価値が経験から生まれる事で消費行動に繋がっていく。
これまでは商品購入前と購入後の戦略・戦術に着目されてきたけど、コト消費が主流になった現代では、購入前も購入後も全て包括して「体験」が作られるので、一貫した物語が必要になってきている。
ストーリーが必要だというのは、間違いなく人間の消費行動の最大要因が「商品スペック」から「経験」に移り変わったのが大きく影響していると考えれる。
そして、体験により感動や感情が動かされて購買に至るわけですが、この感動や感情の振れ幅が大きければ大きいほど購買意欲は高まるわけです。
これを感性マーケティング/感情マーケティングと言いますが、これについて解説していきます。
感性マーケティングとは「感性=文化」
新しい感性をつくることは、新しい文化やあたりまえを創る事です。
iphoneが発売されたときに、シンプルはかっこいいという感性が新たに文化として定着したような気がします。それまではシンプルであることはファッションなどにも一部しか浸透していませんでしたが、iphoneの登場により、ファッション、家具、持ちものなど、ライフスタイルの中心がシンプルである事を求める人間が増えて、ミニマリストという新たな言葉が誕生したような気がします。
また、その新しい感性(=文化)の中で、新しい体験や情報について「意味」や「価値」を見出すプロセスとして感性を捉えるようになっています。
何かを見出そうとする人間の思考の背景には、心のフィット感やさみしさを埋めるために自分とフィットする感性を求めている、そんな時代が現代の消費行動の背景として存在するのだと思います。
今日はこのへんで。次回はこの経験価値マーケティングの話を締める内容になりますが、来週は「感性マーケティング」をもう少し深ぼって解説していきます。