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3,360円のほろ酔い

宣言明けの平日、ひとりで休暇を取った。家事と雑事を片付けるともう昼過ぎ。ちょうどいい頃かなと駅に向かい、数駅先で降りて、30秒ほど歩いてから目当ての食堂に入る。

以前、11:30の開店と同時に駆けつけた時はもう満席で泣く泣く別の店に行ったが、この日はちょうど昼時のお客さんが引けたのか空いていた。というか、私の他にはお客さんは誰もいなかった。

日替わりの定食に刺身を追加、それから瓶ビールを頼むと、店員さんがよく冷えたグラスとキリンラガーの小瓶をすぐに持ってきてくれる。生ビールをぐいっとやるのも楽しいが、瓶ビールを勢いよく注いで、泡が落ち着くのを待つ瞬間も私は好きだ。

そうこうしている間に、店員さんがサラダを運んできてくれる。グリーンサラダにパルミジャーノのスライスが少々、それからトマトが1切れ。やっぱりよく冷えたガラス皿に綺麗に盛り付けられていて、早速、それをつまみながらビールを飲む。チーズの塩気が嬉しい。トマトもいいアクセントになっていて、ビールを半分空にしながら、飽きずにムシャムシャと食べてしまう。

次に運ばれた小菜盛り合わせもよかった。このお店では定食を頼むと5品くらい副菜がついてくる。この日は自家製豆腐、鰹となめこのお浸し、海鼠ともずくの酢の物、カマスの押し寿司、漬け物(いぶりがっこ?)のセット。どれもよくできていて、食堂の副菜ながら、昼から酒が進んでしまうおつまみセット風でもある。

これをアテに飲むのが楽しかったんだよなと、次に日本酒を頼む。「飲み比べ」というのをお願いすると、総誉・手取川・みむろ杉という組み合わせ。手取川だけ冷蔵で、あとの二つは常温かぬる燗だったと思う。冷蔵一辺倒でないことにまた驚く。

刺身(この日はウニだった)もアテにし始めると日本酒はどんどん減っていって、酔いが回ってくる。そして主菜の穴子天丼。甘辛いタレも酒好きにはたまらない。食べて飲んでつまんで飲んで……気がつけば全ての皿が空になっている。

ほろ酔いになりながら〆て会計は3,360円。そのあとは食器屋で勢いガラス皿を買って、家族には甘いものをお土産にしてから、早々と家に向かう。

ひと息つけばもう次の家事の時間になってしまう。休暇のすべてを自分のことに使って、正体をなくすまで夜通し飲み歩いたころが懐かしくもなる。

それでもこうして何ヶ月かに一度、縫うようにして外で飲む時間を作るのも楽しくて仕方がない。赤くなった顔をマスクで隠して帰りながら、また行きたいなと何度も思うのだった。

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