ピンチはチャンスになる
島に住んでいたことがある。
1周回るには1日がかりの大きさだけど、ちょっと車を走らせればどこからでもすぐに海が見えた島。
大きな本屋は1軒しかない。洋服を売っているところはしまむらくらいしかない。イオンすらない。
山と、田んぼと、海がある島だった。
20代のころ、仕事の関係で2年ほど住んでいた。
最初は買い物もできないし、娯楽もないし、どうやって過ごそうか悩むばかり。
でも、数ヶ月過ごすうちに考え方が変わった。
海にゆっくりと沈む夕日がやけに鮮やかに見えた。
秋、どこまでも広がる田んぼに揺れる黄金色に見惚れた。
見上げると青く、高く、広い空があった。
わたしが暮らしたい未来のまちは、こんな田舎の美しさを維持しながらも仕事や娯楽を楽しめる場所だ。
生まれたころから地方の過疎化は問題とされている。
若い人は憧れや働く場所を求めて都会に行くと。
昔からそうだし、これからもそうだと思っていた。
でも、もしかしたら変わっていくかもしれない。
リモートワークが急速に定着した。
本社を地方へ動かす企業も出てきた。
リモートワークをする人のためのワークスペースの充実。
街にまだ慣れない移住者や企業同士が交流、情報交換できる場があること。
ネット環境を充実させることによって、買い物が都会と同じようにできること。
ピンチの中にもチャンスはある。田舎が理想のまちにかわる絶好の機会になってくれるとうれしい。
顔を合わせないリモートワークにも課題があり、すぐに地方回帰が進むとは考えづらいけれど、地方に、密のない環境を求めてくる人はいる。暮らしているまちを変えるのは一人ではできないけれど、多くの人が望んで行動してみれば変わるかもしれない。