涙色のスコープ
関東/四年制大学文系/編集(コミック)志望
「好きなものに携わることができる仕事がしたい→自信を持って『好きだ』と言えるものは本→出版社」と、ありがちな思考回路で出版社を志望した。講談社を第一志望にしたのは、自分の好きな作品を多く手掛けていたから。志したきっかけは単純だった。
現実はそんな単純なものじゃない。就職活動を始めた私は痛感した。目に飛び込んできたのは、絵に描いたような「天才たち」。起業した学生、卓越した語学力を持つ学生。ライバルは、自分より格段に面白い人間たちだと痛感した。天才には勝てない。そう思った私は「講談社はダメ元」とネガティブな自己暗示をかけ始めた。
自信を失った私は、何となく就職活動を続けた。だが、心は正直だった。ダメ元だと頭では理解しているのに、企業研究だ、雑誌研究だと言って、講談社の作品を読む手が止まらない。矛盾だらけの自分にいたたまれなくなり、涙を流す日も少なくなかった。もはや涙が出る理由もよく分からなかった。
「悔しいと思うならまだ戦えるね」。他業界の対策から逃げるように漫画を読んでいた私は、この台詞に惹かれた。その時、涙の理由が分かった気がした。悔しかったんだ。負けることを恐れる臆病な自分に、本当の自分が負けていることが。漫画で心が動くなんて、どこまでもありがちな思考回路だ。でも、心なんて案外単純だ。目の前の霧が晴れたように、目指す場所にようやく照準を合わせられた気がした。そして、「講談社内定」の的を撃ち抜いた私は、この文章を書いている。
内定を獲得するには、どうしても誰かと競わなければならない。常に競争にさらされる日々は辛い。時に、涙を流すことだってあると思う。だからこそ、まずは涙を流すほどの情熱をもって戦っていると自分を認めて欲しい。もしまた前を向けそうになったら、涙の裏にある本気に焦点を当ててみないか。涙というスコープを通して、自分の本気に照準を合わせられた、泣き虫スナイパーからの提案だ。