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人人人
関東/四年制大学文系/編集(ライフスタイル・ファッション)志望
わたしにはずっと思っていたことがあった。
「手のひらに人という字を3回書こうものなら人がいっぱいいることを自覚してもっと緊張してしまうだろうが!」
緊張しやすい性格ながら、習っていたクラシックバレエで1人で舞台に立つことの多かったわたしは、あらゆる策を講じながらも遂に緊張の波から脱却することはできず、ずっとこのようなことを考えるに至った。あまりに不毛である。
そんなわたしにも訪れてしまった、緊張に絶対負けられない就職活動という一大イベントを前に人生を思い返すと、バレエと同じように夢中になっているものがあった。そう、ファッション誌である。書店までダッシュして購入し、折れ目が付かないように慎重に、しかし何度もページをめくった日々があった。
しかしどんなにわたしに影響を与えるものでも、周囲にとってもそうだとは限らない。実際、わたしの友人にはバレエを見に行く人も、ファッション誌を定期的に読む人もいない。
「ファッション誌を広めたい」
わたしが立った舞台を見て、バレエをはじめた女の子が現れたように。面接に持って行けたのはこの気持ちだけである。
まずは周囲から、と販促プランを片っ端から友人に話しまくったり、一緒に雑誌を読んで感想を求めたり。そんなことを繰り返していると、「あんたが落ちたときに受ける企業を考えておくから力を尽くしなさい」と言ってくれる就活猛者や、わたしの面接日を把握していて面接前にお菓子にメッセージを書いて渡してくれる女神など、次々と味方が現れた。
就職活動を通して、手のひらの人の字を飲み込むことは「そんなに緊張する前にもっと人に頼れ!」と自分を奮い立たせる手段になった。直前に書いたらそりゃ緊張するが、助けてくれる人いるよ‼ と思い出すためにはこんなに有効なものはない。今後も大きな壁を前にしたときにこそ、支えてくれている人の存在に背中を押してもらうために「人人人」を飲み込んでみようと思う。
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