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必然的直感

関西/四年制大学文系/校閲志望


うわ、私ここに通うんだ。
二次面接で初めて講談社の門を潜り、エントランスで堂々と存在感を放つ木々に出迎えられた瞬間に、そう思った。
思ったというか、感じた?のだ。
毎朝ワクワクしながらゲートを通る将来の自分の姿がポンッと鮮明に浮かび上がり、頭から離れなかった。
他の企業に就職する自分は全く想像できなかった。

面接は楽しかった。すごく薄っぺらい言葉だが、とにかく楽しかった。
4回の面接はどれも、面接というよりも会話だった。
会話に事前の対策がいるだろうか?
テンプレ通りの無難な回答など求められているだろうか?
自分を良く見せるための嘘は必要だろうか?
この人たちは嘘ついたらすぐ分かるんだろうなあ。面接官の好奇心に溢れた視線を一身に受けながらそう思った。
だから全部正直に話した。好きではないことははっきり好きではないと答えたし、志望職種について聞かれた時は、志望職種に編集を全く含めなかったのはすべての職種に興味があることをアピールするための戦略だと答えた。
面接官は笑ったり驚いたり、様々なリアクションを取りながら聞いてくれた。次第に、もっとこの人たちを笑わせたい、と謎の芸人魂(?)すら出てきた。
最終面接で「校閲っぽくはないよね」との一言が放たれた時はさすがに冷や汗が流れかけたが、「まあ確かにな」と自分でも思ったため、その通りに答えた。でも、キラキラワクワクが好きな自分も、ウルトラ集中コツコツ作業が好きな自分も、どっちも私なのだということを強調した。それが本音だ。

憧れの場所、講談社。最初は正直記念のつもりで受けたが(ESが全然記念の分量ではなかったが)、選考が進むうちに「ここに行けたらいいな」が、いつの間にか「ここしかない」に変わっていた。
そして実際、私はこれから毎朝ワクワクしながらあのゲートを通ることになる。

エントランスでの直感は、偶然なんかではなく必然だったのだと思った。

最終面接の結果通知の前日に参戦した、大好きなアーティストのライブ。不安、達成感でぐちゃぐちゃの感情の中でも推しは変わらず輝いていた。もうどんな未来も受け入れられると思った。
すべての面接で履いて行ったお気に入りのスニーカー。最終面接でなぜスニーカーなのかを問われた際、「足が痛くなるのは嫌だから」と馬鹿正直に答えてしまった。

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