寝付けぬ夜を、ただよう
関西/四年制大学文系/編集(学芸・学術)志望
メタ認知が激しい。
現に今、「メタ認知が激しい」などと格好の良いセリフに若干の気恥ずかしさを感じているし、気恥ずかしさを感じていると表明することを免罪符として「メタ認知」という言葉を使う自分も恥ずかしい。「言葉の使い方正しいっけ……」と『メタ認知 とは』とグーグルに打ち込むことも、バカな質問だなとグーグルさんに思われないか恥ずかしくて、検索履歴を消しておく。
要するに自意識過剰なのだ。自分の言動や思考の受け止められ方、論理的整合性(論理的という言葉が恥ずかしい)がいちいち気になる。
今日もベッドの上、あふれ出る煩悶の波に飲み込まれ、なかなか寝付けない。
就活は、“想定質問”によって乗り切ろうとした。予め質問を想定し、自分がしうる最大限のメタ認知をした上で、セルフツッコミや小っ恥ずかしさを丸ごと飲み込んだ回答を考えておく。それをそのまま口に出せば、簡潔な回答が出来るし、なにより自分の中のメタ認知野郎は鳴りを潜める。
二次面接、ある面接官がこう言った。「心理学、学んでるんだし、ここにいる僕らを心理学的に分析してみてよ」
内心「しらん!」と爆焦り。誰が想定質問として「面接官を心理学的に分析してみよと言われたらこう答える」などと考えておくだろうか。焦った挙げ句口から出たのは、
「○○ですかね。でも□□かもしれないんですけど、△△という意味では☆☆かなぁと思ったりもします」
メタ認知さんこんにちは。
その後もどっちつかずな回答を連発。言い切ることが苦手な私に、「エクスキューズ(言い訳)が多いね」と言われる始末。「終わった……」とも思ったし、「これが講談社か……」と妙な感心までした。
その日は一層、ベッドの上で悶々と考え続けた。タラレバを考え続ける自分と、タラレバを考えても仕方ないと考える自分。
数日後、合格の知らせ。なぜかと考える。こうなのか、ああなのか、煩悶の波をただよい寝付けぬ夜が、いつもより、嫌ではなかった。