あの時の英雄が ふたたび 仲間に加わった!
関東/四年制大学文系/ビジネス戦略(マーケティング・プロモーション)志望
十余年も前にちらと登場したキャラクターから、ずっと傍にいてくれたキャラクターまで。小学校の授業中、教室の隅で窓の外を眺めながらしていた妄想。長い道のりを経て絆を繋いできた登場人物たちが、自分のピンチに集結する。そんなシチュエーションが、私にとっての就職活動だった。
本格的に就職活動が始まってから、私は日々吐き気と戦っていた。長らく出版社を目指していただけに、自分でプレッシャーをかけていた面もある。私は名状しがたい不安感を拭い去ることが出来ないまま、面接に臨むことになった。
面接は、意外にも「自分自身」を見られる。体裁を整えて面接官に釣り糸を垂らしても、つついて欲しいエサには見向きもされない。予想外な角度から質問を投げかけられるうち、魅せようと纏った衣装はいつの間にか剥がれ落ちていた。
そこに残ったのは素っ裸の私。――と、大好きな作品たちだった。
自身の掘り下げに、作品を絡めて質問されることが多かったのだ。「なぜ好きか」「どう他者に薦めるか」などを語るたび、心強い味方が面接会場に召喚されていく心地がした。
梁山泊の108人もの英雄たち、モーゼル片手に馬賊を率いる白虎張。21人の魔法使いたち、山犬の少女とアカシシにまたがる青年、翼を背負った兵士たち。いつの間にか大所帯である。皆背後にて臨戦態勢でいてくれていると考えると、面接官も素っ裸も恐ろしくない。
冒頭で小学校とは言ったものの、私は現実にキャラクターがいるような妄想をすることが今でも好きだ。だからか、以降私は脳内で仲間を召喚してから面接会場を訪れると、自然とリラックスできるようになった。単純な人間だ。
これはただの自分なりの出力方法、緊張との戦い方ではある。が、今このエッセイを読んでいる人も、今まで沢山作品に触れ、少なからず影響を受けてきた人ばかりだと思う。たとえ面接で好きな作品の話はできずとも、自身の血肉となった作品は、心強いパーティーメンバーに違いない。