顧客の抱える課題を見つけるための観察・リサーチの方法~地域ビジネススタートアッププログラムDay2 in 四万十町〜
地域ビジネス講座のDay2がスタート
四万十町地域ビジネス講座のDay2がスタートしました。
講座の開会にあたり、四万十町役場人材育成推進センターの吉村氏より挨拶が行われ、地域ビジネス講座のDay2がスタートしました。
チェックイン
講座の開会に際して、チェックインが行われました。受講生は、①名前、②所属、③現在の気持ち、④今回の講座に期待すること、の4点について共有しました。チェックインでは、「前回講座からのアクションによる変化」、「寝不足の状況」、「顧客設定の課題がうまくいかず今日の講座が不安」など、各自が講座に臨む現在の状態や意気込みが共有されました。
ワーク:マショマロチャレンジ
チェックイン終了後、受講生はアイスブレイクを目的としたワークショップ「マシュマロチャレンジ」に取り組みました。マシュマロチャレンジとは、「パスタ、テープ、ひも、マシュマロを使って、自立可能なタワーを立てるチームビルディングゲーム」です。受講生には、乾燥パスタ20本、マスキングテープ90cm、ひも90cm、マシュマロ1つ、はさみ1つが配られ、ワークに取り組みました。
1ラウンド目では、5分間でマシュマロチャレンジに挑戦しましたが、どのグループも自立したタワーを作ることができませんでした。そこで、8分間の計画立案の時間が設けられ、受講生たちは1回目の失敗を踏まえて、「骨組みに使うマスキングテープが粘着力が弱いので使わない」、「パスタを2重にして頑丈にする」、「4点の柱を作ることが重要」など、各グループが計画を練りました。
2ラウンド目も5分間でマシュマロチャレンジに取り組み、1チームが自立したタワーの作成に成功しました。
作成後、須藤からは、チームワークの重要性や、議論する以上に試しに作り続けることの大切さが共有され、事業開発も同様に試行錯誤を繰り返し、反応や状況を確認していくことが重要であることが共有されました。
キーノートスピーチ:株式会社ケイリーパートナーズ代表取締役 鷲谷恭子氏の講演
キーノートスピーチでは、「顧客インサイトの探求」と言うタイトルで、株式会社ケイリーパートナーズ代表取締役鷲谷恭子氏より講演が行われました。
株式会社ケイリーパートナーズが取り組む事業
最初に、鷲谷さんが現在行っている事業について取材された映像が共有されました。鷲谷さんが取り組んでいる事業は、「母親が2時間から働ける」をコンセプトとしたアウトソーシング専門の事業です。福島県の中小企業が抱える数字入力や経理などのバックオフィス業務を代行し、子育て中の女性にクラウドソーシングとして業務を割り振ることで、子育てしながらキャリアを積める環境を地方に創出しています。
鷲谷さんが事業に取り組む背景
鷲谷さんがこの事業に取り組む背景には、東日本大震災を経験して復興のために親御世代が必死に働いていたが、その限界が親御さん達にももたらされている状態にどうにかこの層の人たちが働く場を作れるかと言う状態から生まれてきた事業です。
事業化していく上での苦労
現在の事業のコンセプトは「短時間でも働ける環境」であり、創業時からその方向性は変わっていません。しかし、事業の進め方には変化がありました。創業当初はフリーランスネットワークを活用することを想定していたそうですが、中小企業からの反応は厳しく、事業としてあまり相手にされない状況が続いていました。また、短時間で働く子育て中の女性のニーズを十分に汲み取れていなかったため、その人たちが求める職場環境を構築する必要性も生じました。
中小企業との信頼関係を築くためには、何度も交渉を重ねることで信頼を勝ち取っていきました。子育て中の女性への対応については、1対1の対話を繰り返し、ニーズを丁寧に汲み取りながら必要な職場環境を整えていきました。特に、子育て中の女性は急な用事が発生することが多く、その際に他者に迷惑をかけることや、その気まずさに対する不安が課題となっていました。
そこで、鷲谷氏はITツールを積極的に導入し、リモートで仕事ができる環境の整備と、クラウドソーシング型の事業運営に移行しました。これにより、急な予定変更があっても、他のメンバーがその空きを埋めることができるように事業環境を整えていく事で現在の事業が成り立つ状況を作っているようです。
株式会社ケイリーパートナーズの展望
ケイリーパートナーズは、もともと中小企業の困りごとを解決することをコンセプトに事業を展開していた会社です。しかし、現在ではさまざまな事業に取り組んでいます。その方向性の一つとして、地方の中小企業に新しい職種の採用枠を導入する採用支援事業を行っています。また、自治体向けに女性のキャリアに関する研修を提供するライフ・ワークサポート事業にも取り組んでいます。
このように、女性の働き方を軸に、地方に求められる新しい働き方の形の導入やその支援を進めています。さらに、今後は短時間で働きたい男性の層にもサービスを提供する予定であると伺いました。
質疑・応答
鷲谷氏のお話の後は、受講生から質問が行われました。
Q:事業における「トライ・アンド・エラー」の姿勢はどのようなきっかけで行っていますか?
A:自分自身がそういった事業を行いたいと思った原体験が突き動かしています。また、事業を始める頃には、批判的な意見が多くありました。そのなかで、その人たちを説得できるだけのモノを得ないといけないと思いました。そういった情報をぶつけてみると、データでは見えない声に触れられます。それによって反響や受け入れられる可能性が上がったという経験が、今の姿勢に繋がっていると思います。
全国で実施しているアンケートでも市場の動向や全国の傾向については把握できます。しかし、地域性の持っている声を聞くことはできないと考えています。日本全体の女性のキャリアに対する考え方が福島で異なるなど地域に基づいた事業を作るためにはこうした地元の声に向き合う必要性に気づいたからです。更に、年を経るごとにニーズも変化するため対応する必要性があるから現在も続けています。
Q:ゼロベースからのスタートのなかで、どんな人に助けられましたか。
A:自分たちの活動に対して、共感してくれる子育て女性や企業の方々が沸々と集まったということがあります。創業期のなかで、そういった人たちの力で一歩一歩、実績を積み上げられたので、そこでの支援は大きかったと感じています。
自分としてコミュニティとか繋がりとか大切だよねっているう価値観を持った人がいっぱい集まってきてくれました。フォロワーがすごく多くなりました。自分を真ん中にしたコミュニティ(自分が働くという)インサイトを言えなかったことだったのですが、その状況をアウトソースの事業にしていくという社会性に共感にしてくれた人たちがポツポツと出てきました。そんな社会性に共感してくれる周りのサポートがありました。この背景には、みんな思っていたけど声にしていなかったし、声にできなかった事だったものが、誰か1人が声にしてくれたことでみんなそっちに動いたという流れではないかと考えています。
インプット:顧客設定の重要性
顧客設定は、①顧客は誰かを明確化するワークと、②その顧客が抱えている課題(インサイト)は何かを特定する段階があることが共有されました。
顧客の明確化
顧客の明確化をするためにペルソナについて考えていく必要があります。
ペルソナとは、「仮面・人格」と訳される。心理学者のユングによって提唱された概念で、「人間の外的側面・自分の内面に潜む自分」として定義されています。
顧客設定においてペルソナが重要になるのは、顧客を明確化するために(商品・サービスを届けたい人)を詳細に描き、作るべきサービスを明確化する必要があるからです。
ペルソナマーケティングを正しく取り組むことで、①顧客視点で意思決定ができる、②共感ポイントが明確になる、③具体的なシュミレーションが可能、④チームでの共通認識が形成し取り組むことが明確になるなどの4つのメリットがあります。
従来の顧客設定方法
これまでのサービス開発は、顕在化している課題(マスの課題)が存在していたためにその困り事を解決するためのサービスを開発する必要がありました。
しかし、現在はマスのニーズの多くが満たされているため、具体的な1人の背景や思い、ストーリーに基づいて解決するためのサービスを作る必要が出てきています。また、絞り込む事で調査や検証すべきことを最小限に抑えていくことができます。
顧客設定の絞り込みの方法として、アーリーアダプターとエクストリームユーザーに注目する必要がある。顧客としてアーリーアダプターやエクストリームユーザーのための製品を開発して、一般層を獲得するような意思決定を取っていく必要があります。
※アーリーアダプターとは、すごくニッチでマニアのような人の事を指します。
※エクストリームユーザーとは、極端に違っている人を指します。
例)歯みがきと言う現象を取り上げると、全く磨かない人と極端に歯みがきをする人などです。
現実的な想定顧客の見つけ方
現実的な想定顧客の見つける場合、①自分自身、②身近な誰か、③第三者を自分の思いや調査にかけられる時間に応じて設定し、調査を進める必要があります。
設定する上で、顧客と利用者を分けて考える必要があります。
「顧客」とはお金を支払う人の事であり、「利用者」は商品・サービスを使用する方を指します。顧客と利用者が同一になる場合もあれば、別々になる場合もあります。(子ども向けサービスなど)そのため、顧客設定を行う上では注意が必要です。
ワーク:ペルソナ再設計ワーク
キーノート終了後、受講生は顧客設定のワークに取り組んだ。最初に受講生が現在考えているビジネスプランについて学生メンターがヒアリングするワークに取り組見ました。
ビジネスプランについて、「どういった思いからその取り組みをしたいのか」、「解決したいターゲットが実はズレているのではないか」、「問題設定は明確かなど」ビジネスプランを作成する上でズレてはいけない問題設定を明確にして、本当に問題を抱えているターゲットを選定するために少し批判的に話を検討しました。
また、気になる点があった場合受講生に質問するなど、ビジネスモデルを具体化するための深堀りが行われました。
インプット:インサイトの抽出
「インプット:インサイトの抽出」では、顧客が潜在的に抱えている課題について特定するためのレクチャーが行われました。
課題解決の構造は、①解くべき問題を定義する(問題定義)、②解決するアイデアを創る(アイデア創造)の2つとされています。特に、解くべき問題を定義する場合、顧客の痛み(代金を支払ってでも解決したい問題)を見つける事が特に重要になります。
こうした顧客が認識できていない(欲求さえ知らない)問題をインサイト「本質的な解」と言います。
課題解決の特定は、
という3つの領域が存在していて、インサイトの特定が重要になります。
①顕在ニーズでは、アンケート調査をして検証ができます。一方で、②潜在ニーズや③インサイトを見つけるためにはインタビューや行動観察をする中で見つけることができるものだとされています。そのため、このような要素はサービス開発者側から提案を上げていく必要があります。
顧客がサービスを使う理由には、①機能的価値と②情緒的価値の2つの異なった価値が存在しています。
機能的価値は比較的表層的ですが、情緒的価値には利用者によって使用する理由や目的が違っているためこの情緒的価値について深く考えることでインサイトを発見するヒントが隠れています。
インサイトを発見するためには以下の4つの要素に目を向けることが重要だとされています。
インサイトを導出する上でのポイントは下記の様なテクニックを意識して実施する必要があるとされています。逆に意識しない場合は不完全な特定になる可能性も存在しています。
インサイトを導出する上では、行動観察という方法が基本行われます。行動観察を行う上での注意点は下記の4つが挙げられます。このようなポイントを意識して行動観察に取り組むことでインサイトが得られるとされています。しかし、簡単に得られるものでは無いため継続的な練習を行ってインサイト抽出トレーニングを積むことが望ましいとされています。
ワーク:インサイト抽出トレーニング
受講生はインサイト抽出方法のレクチャー後、インサイトトレーニングシートの作成を行い、インサイト抽出のトレーニング方法を具体的に経験しました。
インサイト発見シートの作成では実際に作られている製品について3つの観点に基づいて深堀りを行いました。
受講生は映し出される実際に存在している商品に基づいて、3つの段階のフレームワークに基づいてインサイト抽出のトレーニングに取り組みました。
抽出を行う上で、「Suica」、「おててポン」、「ハードキャリーケース」の3つのお題に受講生は答えて回答を行いました。
インプット:共感を軸に顧客を理解する
顧客の課題を特定する上では、「たった一人」の根本にある不満を発見する事が重要になるとされています。
共感を通じた課題定義の方法として、「現場やユーザー・顧客の行動をありのままに観察する。」その中から、彼ら自身がまだ気づいていない不安や悩みを見つけ出し、潜在的なニーズを探り出す事が必要になります。
インサイトの2つの方向性
インサイトを見つける上では2つのアクションを起こしていく必要があるとされています。
特に重要になるのは、Empathize(能動的)であり実体験をしても、していないくてもその背景にある感覚について何度も何度も確認していくことが重要になります。
共感フェーズで行うべきこと
共感フェーズで顧客理解を深めていきますが、深める前に以下の2点についてある程度設定して顧客理解に入る事が重要になります。
行動観察とは?
行動観察とは、「新たな仮説を導出するための定性調査手法」だとされています。具体的には、対象となる体験が発生している現場に実際に足を運び、そこで起きていることをありのままに観察する方法であり、言葉だけではなく動作やその環境を実際に観察する事で人々の行動の背後にある潜在的な真理を知ることを目的とします。なぜ行動観察が必要か?
行動観察が必要になる理由は、人は一つ一つの動作を考えて行っているわけではなく、無意識にかなり多くの積み重ねていることが多いです。そのため、行動を観察し、言葉ではない情報から新たな気づきを得る必要があります。
ユーザーのありのままを理解し、ユーザーが気づいていない、声にならない不安、悩み、不満、課題を見つけ出すためにはこうした観察からヒントを得て形にしていく必要があります。
行動観察のメリット・デメリット
顧客行動を可視化するためには、顕在化しているニーズ、潜在化されている、さらに深い潜在化されているものというのを段階に掘り起こしていく必要がありますが、メリット・デメリットも存在します。
行動観察を行う前提
考える上での発想方法(ジョブ理論)
我々が商品を購入するといういう行為は誰かが代わりに行ってくれる仕事を購入するという発想でサービスを購入してくれるというように考える、「ジョブ理論」という考え方があります。
顧客はある特定の商品を購入するのではなく、「進歩」するために、それらを生活に引き入れると考えます。
この「進歩」のことを、顧客が片付けるべき「ジョブ」と呼び、「ジョブ」を解決するために顧客は商品を「雇用」するという発想で捉えるのがジョブ理論の考え方です。
ジョブ理論の対象になるのは、顧客が「やらないといけない」ことや「やりたい」です。具体的には以下のような要素が当てはまります。
ワーク:「なぜ、あなたは、その商品/サービスを選択したの?」
Day2の最終ワークでは、「なぜ、あなたは、その商品/サービスを選択したの?」ワークについて取り組んだ。ワークは3つのプロセスに基づいて進められました。
ジョブ発見シートの作成
購入した本当の理由と本質的な理由の深堀りを行いました。ジョブ発見シートを記載する上では、購入した商品についてペアで何度も質問を繰り返し行い、購入した背景に隠れている思いについて仮説を立てて深掘りを行いました。このようにして、インサイトの発見とジョブ発見シートへの記載を通して、実際の顧客からインサイトの抽出するトレーニングを終えました。
Day3は8月31日(土)に行われる予定です。受講生は、開催までに実際の顧客として想定している層にインタビュー調査を行いインサイトの抽出に取り組み次回講座に参加する予定です。
執筆担当者)柳原伊吹