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つながる琳派スピリット 神坂雪佳:1 /パナソニック汐留美術館

 琳派の展覧会が多い今秋は、さしずめ「琳派の秋」……と、ほぼ毎年いっている気がする。
 日本美術のなかでも琳派は人気のテーマで、春秋の目玉企画となりやすい。鹿に紅葉、秋草など、なんとなく春よりは秋に向いたイメージもある。「琳派の秋」は必然ともいえよう。
 その「琳派の秋」とやらも、ようよう暮れゆく今日この頃。名品のそろった静嘉堂のリニューアル展も、前回ご紹介した「琳派の花園あだち」も、ラストスパートに入った。
 今回ご紹介する「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」も、来週いっぱいで閉幕となる。過ぎゆく秋を惜しみつつ、汐留での琳派体験を振り返るとしたい。

 神坂雪佳は、近代における琳派の継承者的な存在として知られる京都の画家・図案家。ペインター(painter)であり、いまでいうデザイナー(designer)でもあった。
 本展では京都・細見美術館のすぐれた琳派コレクションをベースに、図案集の版元・芸艸堂(うんそうどう)所蔵の版本や個人蔵の作品をまじえて、雪佳の仕事の全体像に迫っている。
 構成は、まっとうで明快。1章で近世までの琳派の系譜をおさらい、2章から雪佳が登場し『百々世草(ももよぐさ)』などの図案集を丁寧に紹介、3章では一転して漆工、陶磁器、染織といった雪佳デザインの品々にスポットを当て、最後の4章で絵画作品を取り上げる……というもの。
 巡回展ではあるが、東京会場のここパナソニック汐留美術館がデザイン・工芸分野を柱のひとつとしていることもあってか、どちらかといえばデザイナーとしての姿のほうにフォーカスされている点は、特筆すべきだろうか。
 いずれにしてもコンパクトで、雪佳の入門編として最適な内容であろう。
 (つづく

 ※「千住の琳派」村越向栄は1840年生、1914年没。京都にいた神坂雪佳は、1866年生、1942年没。活動時期は重なるといえば重なる


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