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蟹と応挙のまち・兵庫県香美町:3

承前

 昨秋、ひっそりとはじまった「応挙寺」こと大乗寺の特別公開。今年に入ってから、各種メディアで相次いで取り上げられた。
 新年はじめのNHK「日曜美術館」スペシャルでは井浦新が、2月11日のテレビ東京「新美の巨人たち」では本仮屋ユイカが、大乗寺を訪ねている。前者は、2月19日に再編集版が「アートシーン」の特別編として放映。これらの番組を通して、公開を知った方も多いのではと思う。
 わたしが大乗寺にやってきたのは、「アートシーン」放映の翌々日だった。

 駅前や大乗寺までの道に人影はなかったものの、大乗寺の堂内では先に到着した2、3組の説明が開始され、別の団体が一巡を終えて出てきたところだった。
 このときの時刻は9時半で、開堂は9時。後ろからも、ぽつぽつ人がやってきた。
 平日でこの人出は、けっこうなもの。やはり、テレビ放映の効果だろうか。

コメリや餃子の王将が軒を連ねる、なんてことはない場末のバイパスのかたわらに「大乗寺(応挙寺)」の案内板。ここから左へ、細い道を入っていく。周囲は山がちだ
大乗寺までの道を「応挙の散歩道」と銘打つ。歩道を緑にして、わかりやすくしてくれている。門前の旅館は「応挙前」
大乗寺の山門。テレビでも見馴れたカット
山門をくぐると、数本の巨木が出迎えてくれる。樹齢800年という大楠
応挙とその一門の障壁画が展開される、大乗寺客殿
応挙の銅像。弟子が描いた肖像画をもとに立体化したもの

 堂内は自由拝観ではなく、ガイドさんの案内にしたがって、他のお客さんとひとまとまりで順番に巡っていく方式がとられていた。
 畳に足を踏み入れられる部屋もあれば、膝ほどの高さの柵越しにながめる部屋もある。どちらにもそれなりの危険が予測されるが、監視員を各部屋に配置しようにも人手が必要で、パイプ椅子などで詰めておくスペースもなさそうだった。
 保存や危険防止の観点からすると、職員さんの目が行き届くこの方式が最適解なのだろう。

 ガイドさん率いる一団に加わってさえいれば、何周したってよいのだという。
 わたしは1巡めで解説に沿って拝見し、2巡めではガイドさんたちに付いていきつつ、自分のペースで鑑賞をすることにした。(つづく



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