行為と詩情―ACTION & POETRY:2 /新潟県立近代美術館
(承前)
尼崎市の所蔵品を中心とした白髪一雄の作品に続いて、他の作家による抽象作品が並んでいた。制作年代は昭和30年代に集中。数点を除き、館蔵や寄託品から構成。
白髪と同じ具体美術協会の作家は意外に少なく、元永定正、田中敦子くらいだった。元永の作品にみられる色の流れ・溜まりは、白髪にはない要素だ。
前衛書が充実していた。
比田井南谷、井上有一にはじまり、中村木子、江口草玄。有一、木子、草玄は森田子龍とともに「墨人会」を立ち上げた前衛書の旗手だが、木子は県内の佐渡、草玄は柏崎の出身で、その関係で作品が多数収蔵されているらしい。
なかでも江口草玄は、5点が出品。
緩急、濃淡を自在に操りながら、筆に思いを託し、ぶつける。草玄の作品はあまり観たことがなかったけれど、おもしろい。
「痕跡にあふれる詩情」という章には、これまでみてきたようなパッションほとばしる作風とは異なる、ほんわか系の抽象画が。
なかでもよかったのは、高間惣七。ネームバリューの割には、これまであまり意識したことがなかったけれど、晩年に描かれた暖色系の抽象がとても好みだった。
お隣の李禹煥、向かいの壁の難波田龍起とともに、ほんわか空間を演出。この幸せな展示室を最後に、本展は幕を閉じる……
——のだが、当記事としてはもうひとり、これより前の章に登場したひとりの作家をご紹介してから、〆るとしたい。
前記のように、白髪一雄以外の作は、基本的には昭和30年代に描かれたものが軸となっているが、出品作家のなかで群を抜いて若い、40歳代の現役の作家がいた。
小柏(おがしわ)龍太郎さんである。
激しい、たいへん激しいものではあるが、雑然や乱暴な感がなく、全体としてふしぎなほど美しいまとまりをみせている。
散歩をしていたら、満開の桜にふと出合って、一瞬にして心奪われる……そんな感覚に近かった。
そしてもちろん、白髪一雄との親和性も強い。一見して自然にそう思えるけれど、下のライブペインティングの写真をみると、白髪に負けず劣らず、すごいことがわかる。ドラムを奏でながら、壁一面を描いているのだ……
いやはや、いい作家さんをまたひとり知ることができて、ほんとうによかった。
暖冬の新潟行は、最初の目的地から大成功である。
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