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日記:80余年の歴史に幕が降りた日

80年以上にわたって繋いできた歴史の最期は、突然やってきた。


私は以前から、物置き部屋に収納している自分の商品を整頓したいから協力してほしいと夫に頼んでいた。

この物置き部屋には、私が仕入れた商品の他に、夫と一緒に経営していた飲食店で使っていた皿や鍋などが大量に収納してある。それらの片付け方があまりにも雑だったので、きれいに整頓しなおしたいと伝えてたのだ。

夫は快く了承してくれたので、予定を合わせ、仕事を休んで片付けに取り掛かった。


私がスチールラックを組み立てるのに奮闘している間に、何やら夫は収納していた段ボールをすべてリビングに引っ張り出し、中身を出している。

きっと店を再開するときに買いなおしてもいいような安いものは捨て、あとの物は借りている倉庫にでも運ぶのだろう。だからその選別をしようとしているに違いない。そう思っていた。でも違った。

私が自分の片付けが終わってリビングを見に行くと、夫は箱の中身のほとんどを捨てている。中にはそこそこ高い食器や、店の名が刻まれている "せいろ" などもあるのだけど「これ中古品市場で売れる?」と私に聞いてくる。処分するつもりなのだ。

まぁ、古いものが多いし、お店を再開するとなればまた1からスタートなのだから、すべて買い直せばいいのか?とも思った。

しかし一方で、このまま終わらせるつもりなのかな?という嫌な予感もした。でも怖くて聞けなかった。

「そっち終わったんなら手伝ってよ」

無言で淡々と作業を進める夫。言われるままに私は一番近くにあった1つの段ボールの開けて中をのぞいた。すると夫が言った。

「あ、そこに "のれん" が入ってるだろ?」


冷たい風が頬をなでる12月某日の夜、私はのちに夫となる17歳年上の彼に誘われて飲み会に参加していた。

当時私は夫の家に居候をしていたので、私を一人にしてはいけないと、よく友人らとの飲み会に連れて行ってくれていたのだ。

その日は珍しく2次会がなかったので、徒歩で家まで帰ることにした私たち。夫は酔っているのか、なんだか足取りが重い。友人たちはもう10メートルほど先まで行ってしまっている。

ふと夫が歩みを止める。なんだか顔色が悪いなと思っていたら、おもむろに駐車場脇のベンチに腰掛けた。

飲みすぎたのだろうか。大丈夫?と声をかけると、肩を落としてこう言った。

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