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マスクはつらいよ

僕は現在、イギリスのバーミンガムにいるのだが、外出するとイギリスの人たちってマスクをする意味を理解しているのかなと思うことがよくある。「さてはお主、ウイルス側の人間か」という場面にしばしば遭遇するからだ。

7月24日以降、イギリスでは公共交通機関、そして店内でのマスクの着用が義務化されている。義務化されているということは、それを破ると罰(罰金)があるということだ。

だからだと思うが、マスクの着用率は格段に上がった。特にスーパーマーケットでの着用率はほぼ100%だ(もちろん、外では基本的につけていない)。ウイルスが広まり始めた当初はしていなかった人たち、もしくはスカーフをまいたり服で覆ったりしていた人たちも少なくなった。いかついガスマスク的なのを付けている人もいなくなった気がする。

それに反比例して日本でよく見られるタイプの"マスク"が増えた。

白とか青とかの普通のマスクが増えたのは、最近どこでもそのマスクが買えるようになったからだろう。3月くらいにはスーパーやドラッグストアには売っておらず、アマゾンなどで高いやつを買うしかなかった。今は基本的にどこでも買えるし、リバプールの駅でこんな自動販売機もみつけた。

今もやっているのかはわからないが、以前はバーミンガムの駅では無料でマスクを配っていた。でもリバプールでは駅内のコンビニだけでなく、以前はお菓子が入っていた自販機もマスクに入れ替え、フル活用で売ろうとしている。これを親切とみるかいやらしいとみるか。

とにかく今やマスクはイギリスでも一大産業である。


しかし、過去イギリスにはマスクをする文化がなかった。

「イギリスのマスク文化」というと留学に行く前の説明会などで、イギリスと日本の文化の違いとして説明されていた話を思い出す。高校の時も、大学の時も、旅行代理店の人からイギリスに行く前には必ずこんな話をされた。

「イギリス人はマスクをする文化がないから、日本のように予防のために普段使いはしない。だから日本と同じようにイギリスでマスクをしていると季節に関わらず、懐疑的な目で見られる」

異国へ行くことを楽しみにしていた僕は、そんな些細な文化の違いを聞くたびに驚き、そうなのかと胸を躍らせていた。しかも僕はマスクが嫌いで、冬でも基本的に付けていなかったからイギリスはなんて住みやすい国なんだと思った。

今留学ができるのかもわからないが、もし留学の説明が行われているのであれば「マスクをつけたら懐疑的な目でみられますよ」なんて説明はされず、「できるだけマスクを持って行ってください」的なことを言われるだろう。なんなら、しおりの持ち物欄に"マスク"という欄ができているのではないだろうか。

その時にはこんなことが起きて、イギリスにマスク文化が生まれるなんて思いもしなかった。


話は戻るが、マスクの着用が義務付けられ、着用率が増えたといっても場所によっては、マスクをしていない客がいるところもある。しかもこの前は店員が着けていないスーパーがあった。店内を見渡す限り、一人だけ、店員が、マスクをつけていないのである。

なんのために外にいる警備員は店内の人数を制限し、せわしくアルコールをプッシュしているのか。

なんのために客はアルコールをつけ、マスクを着用し店内に入っているのか。

僕に至っては最近手が荒れているからできるだけアルコールなんかつけたくないが、これもウイルスを広めない、うつらないためだと我慢している。

それなのにまさか店員が、ねえ・・・。もしかしたら、あいつはウイルス側の人間だったのか?


自分で書いたはいいものの、ウイルス側の人間ってなんだ。


彼がつけていなかったのは、恐らく習慣がなかったからだろう(とはいっても店員はさすがに着けないとだよね)。

マスク文化のなかったイギリスに、急にマスクをつけざるを得ない状況が生まれた。だから彼のように慣れておらず忘れてしまう人もいれば、着け心地も悪いし単純に着けたくないと考えている人たちもいっぱいいるのだ。

そのせいか、つけていながらも外からみると「それたぶん意味ね~」と思ってしまう状況にもよく遭遇する。

ある人はバスに乗るために、ポケットからマスクを取り出したのだが、それがもう完全に使いまわしている、いや、使い倒しているやつだった。使い捨てマスクなのに。

取り出したときにくしゃくしゃすぎて、一瞬鼻水をかんだ後のティッシュかと思うほどだった。絶対内側にも菌がついている。なんかもうコロナよりも悪い菌がいそうだった。


また別の人は、バスに乗った後すぐ、「着け心地わりー」みたいな感じで外していた。そして降りる時にまたつけた。

いやいや、一番大事なところで外している。バスに乗り密ができてからが勝負だろうよ。

本領を発揮できないマスク。切ないったらありゃしない。切ないのはDolce & Gabbanaの香水だけで十分だ。


結局のところ、今は義務付けられているから、仕方なくつけている人も一定数いるんだと思う。罰金を逃れるためだ。とはいえ、仕方なくつけている人はどこの国にもいるから別にいい。重要なことは適切なタイミングで適切につけているのかどうかである。


パンデミックにより突如としてイギリスに生まれたマスク産業とマスク文化。5年後、もしくは10年後くらいにどうなっているのだろう。もうきれいさっぱりなくなっているのだろうか。

きっと一つの指標は、旅行代理店にイギリスと日本の文化の違いが紹介される時だ。「みんなマスクなんてしないんです」「マスクは絶対もっていってください」どちらになっているのか気になるところである。


執筆者・東京人




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