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兵庫の春の味をレシピとともに

イカナゴのシンコ漁(稚魚)が解禁されました。市場には水揚げされたばかりのシンコのかごが並び、キロ単位で購入されていきます。お目当ては甘辛く炊く「くぎ煮」です。瀬戸内海沿いに暮らす兵庫県民は、くぎ煮を調理する香りをかいで春の到来を感じるといいます。春の味覚はイカナゴだけではありません。播州人3号がレシピの掲載された記事とともに紹介します。

瀬戸内に春を告げると言われるイカナゴですが、近年は不漁が続き、値段も高止まりしています。

ここ数年の激減ぶりが分かります。2020年以降も傾向は同じです。
同世代には「おやつもくぎ煮だった」という人もいますが、信じてもらえそうにありませんね。

冷凍すれば長期保存もできました。ただ新鮮なうちに調理する必要があるようで、鮮魚店前には朝から長い列ができます。

そんなくぎ煮のレシピを紹介します。
2018年3月に小学生向けのくぎ煮教室の記事とともに掲載されていました。

【1】イカナゴ1キログラムを洗い、しっかり水を切る

【2】しょうゆ200ミリリットル、砂糖230グラム、みりん150グラム、酒50ミリリットル、ショウガ 20グラムを鍋に入れる

【3】イカナゴを入れ、調味料が均等に行き渡るようにかき混ぜる

【4】アルミホイルをベレー帽のような形に整え、落としぶたにして 煮立たせる。泡に照りが出てきたらアルミホイルを取る

【5】弱火で煮詰め、煮汁が少し残っている状態で火を止める。冷まし てザルに上げ、煮汁を切れば完成

もう一つ、2005年3月に高砂市の「伊保漁協提供の基本レシピ」として掲載されたものです。

 【材料】
 イカナゴ 1キロ
 濃い口しょうゆ 250cc
 みりん 80cc
 砂糖 180グラム(辛口の場合は120グラム)
 土ショウガ 50グラム
 水あめ 適量(数個のあめ玉で代用可)

 【作り方】
 (1)イカナゴを洗い、水気を切る
 (2)好みの調味料を合わせ火にかける
 (3)沸騰後、イカナゴと土ショウガ各1/4をばらまくように入れて煮る。途中、絶対に混ぜない
 (4)イカナゴが白くなったら同じことを繰り返す
 (5)落としぶたをして中火で1時間半、煮詰める
 (6)煮汁が少なくなったらふたを取り、水あめを入れて鍋ごと振る
 (7)煮汁がほぼなくなれば、ざるに入れ、風で一気に冷ます

同じ1キロのイカナゴを使ったレシピですが、調味料の分量などが違います。山椒や唐辛子を入れるなどして味を変える家庭もあります。

レシピにある「あめ玉」で思い出しましたが、子どものころ、この季節にだけ、四角柱の形をした市販のあめを台所で見掛けました。くぎ煮の水飴代わりに使われていたようです。

シンコは日々成長します。
解禁日以降もどんどん大きくなります。
今年の解禁日は大きさ「4センチほど」とありました。

垂水区 廉売市場
シンコ漁解禁
鮮魚店が特別営業

 播磨灘や大阪湾でイカナゴのシンコ漁が解禁された1日、神戸市内の市場にも春を告げる味覚が並んだ。再開発事業のため今年中に営業を終える垂水廉売市場(垂水区神田町)では、2月末に店じまいした鮮魚店が漁の期間限定で特別開店。地元・垂水漁港などで水揚げされたイカナゴを求め、人々が列を作った。
 神戸市漁業協同組合によると、この日は、垂水、須磨、長田などの港から66隻が出航。午前6時20分ごろから塩屋、垂水沖などで網入れした。初日の水揚げ量は昨年の約半分だという。
 1934(昭和9)年に営業を始めた垂水廉売市場は漁港に近いため、シンコ漁の解禁時期に人だかりができる光景が春の風物詩だった。しかし、市場の終了に伴い、イカナゴの販売は今季が最後になる。
 同市場内の鮮魚店「木下水産」は前日、閉店したばかりだが、解禁に合わせて特別営業。この日は午前5時半には10人以上の列ができ、同8時半ごろにイカナゴ入りの籠が届くと、客から早速、「5キロちょうだい」などと声が飛び交った。
 従業員らが手早く1キロずつ袋に詰め、客に手渡し。朝一番に仕入れた約180キロは1時間で売り切れた。
 「もう営業するのも最後になったが、知った顔が並んでくれてうれしい」と創業時から働く正井つとむさん(79)。「待ってくれとう人がいるから、イカナゴの時期まではやりきりたい」と目を細め、手を動かした。

(2022年3月2日付朝刊より)

イカナゴ漁が解禁され、瀬戸内海の水温が上がると、アサリも旬を迎えます。
2014年の連載「はりま 旬の逸品」からレシピを紹介します。

あさりご飯
たつの市など
浜に脈々伝わる母の味

 潮干狩り客でにぎわう、たつの市御津町黒崎の新舞子浜。アサリは水温が上がる春先から身が太り、この時期が一番おいしい。調理法はさまざまあるが、「あさりご飯」は浜に伝わる母の味だ。
 創業約50年の料理旅館「舞子館」。「春のアサリは、ゆがくと白濁するくらい濃い汁が取れます」と女将(46)。神戸から嫁いで20年。義母の(74)から作り方を覚えた。今では旅館のあさりご飯は女将に任され、待ちかねたファンから毎春予約が入る。
 「娘2人にも、嫁入り道具のひとつとして、この味を受け継いでほしいですね」
▼レシピ・メモ
◆材料 〈5合分〉
 殻付きアサリ500グラム
 米ともち米5合(割合は9:1)
 合わせ調味料
 (酒、みりん、うすくちしょうゆ各25cc、塩10~15グラム)
 ①水からアサリをゆがき、ゆがき汁と分ける
 ②米、合わせ調味料、ゆがき汁を入れ、通常の水加減まで水を足す
 ③30分ほど置いて炊く。アサリは殻から出す(好みでしょうゆ、酒、砂糖、みりん、昆布やカツオのだし汁で甘く炊いて味付けしておく)
 ④炊き上がったご飯とアサリを混ぜる

(2014年5月19日付朝刊より)

レシピにある「うすくちしょうゆ」もたつの市が全国有数の産地です。
新舞子浜は西日本屈指の干潟で知られ、春は潮干狩り、夏は海水浴客で賑わいます。この時期、タイミングが合えば、こんな景色に出合えます。

夜明けとともに黄金色に輝く新舞子海岸の干潟(2021年2月)

新舞子浜周辺にはもう一つ名所があります。
「ひと目2万本」とうたわれる綾部山の梅林です。

斜面を白く染める綾部山の梅の花(2021年3月撮影)

綾部山は新舞子浜のすぐそばにあり、梅の香りをかぎながら、春の瀬戸内海を眺めることもできます。

連載「はりま 旬の逸品」では、播州特産のカキも紹介されていました。カキの味をそのまま楽しめるレシピです。

カキのおろし合え
姫路市など
素材の持つ甘みに浸る

 殻の中であふれんばかりの身が輝く。「栄養でいっぱいの揖保川の水と、潮の速さが生んだ自然の恵み」。揖保川の河口、姫路・網干のカキ漁師(25)は胸を張る。
 鍋で煮立て、冷水で締めても、その大きさはほとんど変わらない。口に含んだ途端、独特の甘みで満たされた。「濃いでしょ」と笑みを浮かべた。
 グリコーゲンが多く〝海のミルク〟と称される。疲労回復にも効くとされる。
 「おろし合え」は鍋やフライと違って調味料は使わず、そのものの味を楽しめる。干満の差が大きい今、ミネラルたっぷりの冷たい水で育ったぷりっぷりを頬張った。

〈レシピ・メモ〉
 ◆材料〈1人分〉
 加熱用むきガキ10粒
 大根おろし
 ワカメ
 刻んだネギとユズの皮
 ポン酢各少々

 ①鍋で湯を沸かす
 ②カキを入れ、強火のまま約7分間ゆでる
 ③氷水を入れたボウルにカキを移し、冷たくなるまで冷やす
 ④器にワカメを敷き、カキ、大根おろし、刻んだユズの皮、ネギを盛り付ける
 ◆メモ 鍋に残っただし汁に少しのしょうゆと塩で味を調えて、米とカキと一緒に炊き上げれば、カキ飯も楽しめる

(2015年2月16日付朝刊より)

姫路以外にも播磨灘では、室津(たつの市)、相生、赤穂とカキの養殖が盛んです。

レシピにあるユズは姫路市北部の安富町が産地です。

カキに添えるワカメも淡路島周辺が有名で、これからが収穫の最盛期です。

旬を迎えた地元産の食材に、地元産の調味料を掛け合わせて作る料理がおいしくないわけがありません。
紹介したレシピを参考にぜひ作ってみてください。

<播州人3号>
1997年入社。冷凍すれば長期保存できるイカナゴのくぎ煮です。さすがにおやつにしたことはありませんが、パスタに混ぜたり、チーズとともに食パンに乗せたりして食べました。イカナゴが庶民的な値段だった20年以上前の話です。今から考えれば贅沢な食べ方ですね。

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