
旅と移住のあいだのような。『ホテル暮らし』という選択。
東京を離れて、ホテル暮らしをはじめました。
緊急事態宣言が発令された数ヶ月後の2020年6月、東京の家を解約し、ホテルを転々としながら暮らす『ホテル暮らし』をはじめました。
会社にアクセスがしやすいという理由で都心に住んでいましたが、コロナ禍を機に仕事がリモートワークに切り替わり、都内に住まう必然性が薄れてしまいました。
わたしは現在、ホテルを運営などをする会社の正社員と、フリーランスで地方のプロデュースを行う仕事のパラレルワークをしています。もともと出張も多く家を空けることもあり、かつ、旅が好きだったので、都内で払っていた高い家賃を全てホテル代に当て、もっと自分の体験に投資をしていきたいとも考えました。
住む場所にとらわれずに、働き、暮らし、旅することができないかな、と。
以前から泊まってみたかったホテルに泊まったり、加えて、定額で全国の提携している施設に宿泊できるサービス「HafH」を活用したりして『ホテル暮らし』をスタート。大きい家具は捨て、細々とした荷物は実家に押し込み、住民票もひとまず実家のある場所へ。
そんな風に、他拠点生活をしながら過ごした、この約半年間。色々な地域に"住まう"体験をすることができました。
それは、旅と移住のあいだのような。
「ホテル暮らしと、普通の旅と、一体何が違うのか?」
わたしもホテル暮らしをする前までは、これまでノマドワーカーと呼ばれる人たちが実践していた「旅をしながら働く」というライフスタイルのようになるのかな、と漠然と想像をしていました。しかし、実際に行ってみると、これまでの「旅」とはひと味違う、街に"住まう"という体験ができることに魅力を感じました。
まるで、旅と移住の、ちょうどあいだのような体験だなぁ、と。
わたしは、「1つの拠点に割と長く滞在をする」「気に入った拠点に何度も訪れる」という暮らし方をしています。ホテル暮らしで、他拠点生活、というイメージです。
すると、観光や旅とはちょっと違った関わりを街と持つことができ、その街の日常にグッと近づくことができる。その街に、"住まう"ことができるんです。
日常を過ごせる場所。
全国の宿に滞在しやすい環境があることで、何度も同じ街、同じ宿に訪れる機会が増えました。すると、非日常ではなく、日常を過ごすことができるようになる。
旅というと「非日常」な体験をすることが面白さだったりもするのと思うのですが、そういう旅よりも、パンとコーヒーを買って公園で何時間もボケッとしてみたりするのが、すごく好きで。昔から、せかせかするのが苦手だったんです。
ただ、どうしても「観光」が目的でその地域に訪れると、そんなわたしですら、一秒たりとも無駄にしてなるものか!色んな所に行かなきゃ!という気持ちになり、慌ただしく過ごしてしまうことがあります。
観光スポットを巡るような旅も、そこならではの良さはもちろんあるのですが、やっぱり、街の本当の魅力って「日常」や「日々の暮らし」の中にある気がするんですね。
お気に入りの喫茶店やパン屋さんを発見したり、地元の人と全く同じように生活をしてみると、"せかせか観光"では見えてこなかった景色が、たくさんあることに気がつきます。
喫茶店でふと目にした出来事に心をわしづかみにされたり(そんな瞬間のことを以前のnoteで書きました)、窓から見える夕陽と海の顔つきが、毎日違うことに感動したり。
心に残っている宝物のような体験というのは、いつもその土地の「日常」の中にありました。「お客さん」としてではなく、その街に溶け込み、限りなく「住人」にちかい暮らし方ができる。それが、たまらなく楽しくて心地が良いんです。
ただいま、と帰れる場所。
大好きな宿で、何度も通っている宿があります。
岡山県倉敷市の児島にある、『DENIM HOSTEL float』。
繊維のまちとして発展し、国産ジーンズ発祥の地でもある児島という街。そんなデニムゆかりの地にある『DENIM HOSTEL float』は、「itonami」というデニムのD2Cブランドが運営する「泊まれるデニム屋」をコンセプトにしたホテル。
この夏行きたい宿は?と聞かれたら即答で岡山のDENIM HOSTEL float (@dhfloat921 )。ホステル、カフェ、ショップを備えた泊まれるデニム屋さん。ソファやスリッパも全部デニムづくし!高台にあって窓からはこのビュー。思わず延泊してしまったほど居心地が良くて藍色と空と海の青色に癒される宿..! pic.twitter.com/khBwvciwS8
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) May 18, 2020
「もう1日、泊まっていってもいいですか...?」floatに初めて訪れた時、あまりの居心地のよさに、滞在を伸ばして伸ばして、、、。3回くらいこのやり取りを繰り返したのを覚えています。笑
デニムの藍色に溢れた手作りの宿で、瀬戸内海を眺めながら過ごすスローな時間はもちろん最高なのですが、なんといってもこの宿の魅力は、スタッフのみんなが、一緒に飾らない日常を過ごしてくれるところ。
いきつけのうどん屋に誘ってくれたり、海遊びに連れ出してくれたり、ローカルスーパーに買い出しにいって魚の安さに驚愕したり。時には、仕事の話もしたり。数日間いると、自分が遠くからきたことを忘れてしまうくらいに、馴染んじゃう。笑
それは、旅先に長期滞在してダラダラするという感覚ではなく、きちんと地に足ついて"暮らす"という感覚。(もちろんダラダラする日もある。)人によるかもしれませんが、そんな環境だからこそ、仕事も定住しているときと変わらずに、落ち着いてしっかりできる。
今はまだ、明確にどこかの街に定住したい!と、強く思っているわけではないのですが、「あぁ、この街だったら、暮らしてみたいなぁ。」と、この街とずっと関わっていくかもしれない未来を、想像することもあります。
移住・定住とかでもなく、関係人口とか、そんなかしこまった感じでもなく、もっとあいまいな『たまに、暮らしに来る人』。そんな立ち位置ってすごく心地いいな、と感じています。
「お邪魔します」ではなく、「ただいま」と帰ってこれる。そんな宿や街がまだ少ないですが、ホテル暮らしをはじめてみたら、いくつかできました。
ホテルは、街の玄関口。素敵な"日常案内人"のいるところ。
はじめて訪れた街だと、知り合いでもいない限り、その街の本当の日常と自力で出会うことは、なかなかハードルが高いなと思います。地元民に愛される素敵なお店はネットの情報がアテにならないこともよくあるし、もっとローカルな、どのスーパーで何が売っているなんていう情報は仕入れられない。
そんな時に、ホテルというのは、街の日常を教えてもらえるうってつけの場所です。ホテルの人たちが、その街の日々の暮らしへと連れ出してくれる。最近は、観光メインでなくて、その土地の暮らしにフォーカスした、日常を味わえることに価値を置く宿も、増えてきているように思います。
そんな宿に出会えると、その街との距離がグっと縮まって、わたしは『たまに、暮らしに来る人』になる。
どんな移住施策よりも、素敵な"日常案内人"に出会うことが、街にとっても旅人にとってもすごく良い関係を築けるきっかけになるんじゃないかなぁ、なんて思っています。
街の日常を伝えるホテル。
『たまに、暮らしに来る人』になる。
そして、旅と移住のあいだのような『ホテル暮らし』という選択。
大げさかもしれないのですが、地方の仕事に関わる身としても、これらのキーワードが、日本を悩ませる地方の課題解決のヒントになるかもしれない、そんな希望さえも感じています。住み方・暮らし方・働き方のグラデーションが増えて、色んな選択ができることが、地方の未来を明るくするのかもしれない。
しばらくは、この暮らしを続けて、「ただいま」と帰れる、たまに暮らしに行ける場所を増やしていきたいです。
ぜひ、皆さんの街に訪れた時には、街の日常へ連れ出して頂けると嬉しく思います。
(HafHのように、何度も訪れるたい街にいきやすくなるようなサービスや仕組みも、世の中に増えていくといいな、と感じます。)
"暮らし"にいきたくなる!素敵な街と、素敵な宿たち。
最後に、わたしが実際に訪れて、たまに暮らしに行っている、もしくは、また暮らしに行きたい街や宿を紹介します。
どの宿も素敵な日常案内人がいらっしゃり、そして、街に暮らし、働ける環境が揃っているところをピックアップしました。
旅しにいくのも、もちろんおすすめですが、いつもより長めに"暮らし"にいってみてほしい宿ばかりです!
※現在は、私自身も移動を自粛しており、なかなか訪れることができていないのですが。。。落ち着いた時期に、ぜひ・・・!
■静岡県 沼津市 『Tagore Harbor Hostel』
沼津にある@TagoreHostel で #HafH暮らし 。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) July 29, 2020
海あり山あり。センス抜群のオーナーの拘りが詰まった空間。戸田湾を一望できるリゾートでもあるし地元の人の日常がすぐそばにも。
上質で穏やかな海時間が流れていて、リゾートと日常のちょうど間のような。
わざわざ、そして、何度でも訪れたい宿です pic.twitter.com/Qz962tC9xO
■山口県 下関「uzuhouse」
月額サブスクでホテルに住み放題の #HafH を使い、出張ついでに山口県下関のゲストハウス『uzuhouse』へ。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) August 24, 2020
屋上から、ホテル併設のカフェから、そしてお部屋から...どこからでも海が見える最高のロケーション。海と共にある暮らしを味わえる場所でした。
波音をBGMにお仕事。捗る。
#HafH暮らし pic.twitter.com/ew2ZZhRTPf
■東京 根津『HOTEL GRAPHY NEZU』
月額サブスクでホテルに住み放題の @HafHtheWorld を使って、谷根千の一角にあるHOTEL GRAPHY NEZUにしばらく滞在。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) August 9, 2020
東京の空にぽっかり空いた広い屋上空間から眺める夕焼けや、小さな書斎を手に入れた気持ちになる快適な部屋。
秘密にしたい"下町オアシス"でとっても癒されました。
#HafH暮らし pic.twitter.com/OVK36j2MTt
■長崎 壱岐 『LAMP 壱岐』
出張で行った長崎の壱岐。その時泊まったLAMP壱岐が本当によかった。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) June 30, 2020
90年代前半に建てられた元旅館を再利用した木造建築で格子状の窓や昔ながらのすり硝子が大切に残されていて風情を感じる
昔の建物は光が美しく入るように計算されているのか...朝の光が差し込む様子にはうっとり。個室は五千円〜 pic.twitter.com/JymHBJFuLI
■静岡 熱海 『ロマンス座カド』
熱海に11月にオープンした、廃ビルを改装して作られた宿「ロマンス座カド」へ泊まってきた!
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) January 22, 2020
客室は文豪など、部屋毎に熱海らしいストーリーや歴史を表現しているレトロなしつらえ。
私の部屋はおそらく「ストリッパー」の部屋。熱海ならではの物語に想いを馳せながら泊まれる楽しい宿だった..! pic.twitter.com/QCKyX6Dn9h
■岡山 奉還町『とりいくぐる』
"下宿"のような宿が好きです。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) August 21, 2020
以前訪れた、岡山奉還町の商店街の西の端っこにあるゲストハウス「とりいくぐる」。鳥居をくぐってはいる不思議な宿。
夕焼けに照らされた中庭や、昭和の残り香漂う建物やインテリア。全部が心地良くて、肩肘貼らずに過ごせるのはこんな場所だよなぁと感じます。 pic.twitter.com/svoImxTxcb
■鹿児島 甑島『FUJIYA HOSTEL』
鹿児島の離島、甑島(こしきしま)の1日4組だけの宿、FUJIYA HOSTEL。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) October 31, 2020
島で採れた魚や、自慢の手作り豆腐を味わう朝ごはん。
優しい光が差し込む縁側、日向ぼっこできるハンモック。夜は海辺へ星空観察へ..
素朴な島暮らしに溶け込み、旅と日常の間のような時間が過ごせて本当に心地のよい宿でした。 pic.twitter.com/nR9QBN9URP
■東京 赤坂『TOKYO LITTLE HOUSE』
めちゃ長いです。同じ興味や疑問を持つ人に少しでも届いたら嬉しいなと思い書きました。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) August 10, 2020
今から75年前、廃墟だった東京。
東京のルーツ、私の家族のルーツを知りたくて、小さなホテルを訪ねた時の話しです。
空白の時を知りたくて、小さなホテルを訪ねた。#note https://t.co/YY6gPAcg2u
■茨城 つくば『旧小林邸ひととき』
筑波山の中腹に今年の10月にオープンした古民家宿「旧小林邸ひととき」は、縁側ラバーにおすすめしたい宿NO.1でした...
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) November 15, 2020
築126年の母屋を当時の面影を残しつつ丁寧にリノベ。二階の客室からは関東平野の絶景が見渡せます。
優しい光がが差し込む縁側で、いつまでもゆっくりしていたい。
📸@norito_m pic.twitter.com/MfvD9RsXKs
■岡山 宇野『HYM Hostel』
夏のひとり旅にオススメしたいホテルは、岡山県宇野の海沿いにあるHYM Hostel。
— こばみほ / 小林 未歩 |ホテル・旅・食のプロデュース (@kobamiho52c) June 20, 2020
廃墟になっていた元宿舎をリノベして作られた空間はほぼ全てオーナーさんの手作り。
朝昼夜と違う顔をみせる瀬戸内海を眺めながらのんびりしたり仕事をしたり気ままな時間をすごせる。1部屋六千円〜泊まれるのもお得... pic.twitter.com/s0OY1g2kiQ
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