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12月に読んだ本(上)

画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。
今月は面白い小説に出会えました。


しをかくうま

何で馬なの?作者馬好きなの?というところが、読む前は気になって仕方なかったが、読み始めると圧倒的な疾走感とセンスに満ちた文章で、どんどん読めてしまった。
特徴的なのは、固有名詞が太字で印刷されているところ。所々にみられる言葉遊びも面白い。
根安堂とはネアンデルタール、主人公の仕事はアナウンサー、言葉に対するこだわりは改めて語られることはないが、随所に垣間見えて、またそれが独特のテンポと少しのおかしさを醸し出している。

なぜ人類は常にあと一歩、たったのあと一歩が足りないのだ。長大なセンテンスで言葉を操り、詩を書き、物語をつくり、映画を撮り、歴史を学び、幸せについて語りさえしながらなお、なぜ己がいっとう賢い動物であるという妄想だけがやめられないのだ。

本文から

最後、合理性が追及されつくした未来で、人類は詩をもとめ続けるのだ。人類が誕生して、その子孫が地球上に移動して広がったように、移動とは人間の根本的な欲求の一つだ。それをかなえてくれる者は誰なのか?それは馬だ。「乗れ」という声が聞こえる。そしてまたそこから新しい人類と馬の歴史が始まるのだろう。

きわこのこと

ホラーかな?と思えるくらいなんだか怖かった本。
連作短編集で、語られるのは直接にも間接にもきわこのこと。
いったい「きわこ」とはどういう人物だったのか。短編ごとに、いや、一編一編の中でさえもころころ印象が変わる。
つかみどころのないきわこの幻に読者も翻弄される。面白かったです。

いますぐできる実践行動経済学

高校生向けなので、わかりやすく、興味の持てる内容だった。
経済学の用語もわかりやすく解説されており、まあ、長年生きているとこのあたりの学問の発展も、ああ、こういう風になってきたよね(企業の広告から公報まで)と実感できたり。

地図と拳

直木賞受賞作。
すっごく分厚い。
時代は、戦争前から中の日本。舞台は満州。
理不尽な世の中で、国の今後を憂える者と、人類を想いを馳せる者、ただ眼の前の敵を倒すことだけ想う者、さまざまな思惑が入り乱れるという話。
主人公の細川がミステリアス。冒頭の満州に向かう部分で、読者はグッと細川に心をつかまれることだろう。
細川のほかにも、魅力的な登場人物、都市計画や建築に関する蘊蓄もたっぷりで読み飽きない。
面白かったです。読み応えたっぷり。

以上です。下に続く。

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