82年生まれ、キム・ジョンを読んだ 2023/08/18

「これは、わたしの物語だ」
帯にあるように、女性なら程度の差はあれど、皆そう思うのではないだろうか。
だれもが、キム・ジョンであり、私というものを振り返るとき、キム・ジョンがいつも私の中にいるのだ。

キム・ジヨンはある程度恵まれた普通の家庭に生まれ、育つ。家庭は経済的には少し波乱万丈な時期もあったが、彼女は進学できた。
「そのころになると、女だから勉強ができなくてもいいとか、学歴がなくてもいいと考える親はいなかったようだ」
そういう時代になったのだ。
でもやはり、「決定的な瞬間になると「女」というレッテルがさっと飛び出してきて、視線をさえぎり、伸ばした手をひっつかんで進行方向を変えてしまう」のだ。
事実、このあとキム・ジヨン氏は、就職で苦労する。
そして、就職してからも目に見えない、いわれなき差別をうけるのだ。それは、彼女が彼女であるからではなく女性だからだ。
もう、彼女の行く先、ありとあらゆるところに困難だらけで、しかも、それも自分が経験してきたり、横目で見てきた友達の経験したことばっかりで、もう最後「ははははははは!」とブちぎれて笑ってしまったくらいだ!!!

いくら正直に頑張っても、全否定される人生。辞めざる得なかった仕事。
結婚して子供ができれば、善良な夫も家事を「手伝う」という。
家も家族も子供も二人のものであるのに「手伝う」とは?
「どうして他人に施しをするみたいな言い方するの?」
まさにそうだ。この後親に介護が必要になれば、きっと自然にキム・ジヨン氏が介護をすることになるのだろうな。(小説の中では彼女は病気なのでそうならないかもしれないが)そして夫はそれを「手伝う」のだ。あなたの親なのに?

キム・ジヨン氏が幼いころ、自分の母に心の中で語りかけるセリフ、
「お母さんは自分の人生を、私のお母さんになったことを後悔しているのだろうか。長いスカートの裾をグッと押さえつけている、小さいけれどずっしりと重い石ころ。」
いや違う、子供が石ころなのではない。すでに私たちのスカートには生まれた時から石ころがいっぱい縫い付けられているのだ。押さえているだけじゃないねんで…。

解説では、韓国では兵役があるので、男性側にも不平等感があるようだ。
生殖という面においては、男と女には違う役割がある。また体のつくりにおいても生まれながらに差がある。
そこにうまく折り合いをつけるのはそんなに難しいのだろうか。
兵役の問題を抜きにしても、今後、フェミニズムが盛り上がりを見せるにつけて、男性側にも不平等の波が押し寄せるかもしれない。
常に思いやりを持って生きるのはやはり難しいのかな。

・・・さて、この本のテーマとはまったく関係がないかもしれないが、読了後のもう一つの感想。
韓国の独特の文化が興味深いということだ。
頼母子講とか(これは日本にもあるのかな?なにかで読んだような)、住居の保証金のことなど、距離はこんなに近いのに、なんて私はお隣の国のことを知らなかったのだろうかと。あと、差別的な呼び方である「ママ虫」など、こんな言葉が流行っていたとは。
また韓国の小説を読んでみようと思う。

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