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「トラペジウム」を見て、雑文

視聴直後に書いたメモを元に多少形を整えた文章になります。
ネタバレ注意です。


千葉の女子高生、東ゆうちゃんがどんな手を使ってでもアイドルになると闘志を燃やす物語。このゆうちゃんがなかなかにいい性格をしておりまして…。正直共感するのが難しかった。共感できない=面白くないという話ではないですが、「アイドルになりたい」動機づけの部分が明確に語られていなかったため、受け手側がやや置いてきぼりになってしまったように感じました。原作のモノローグ主体だった部分が削られていた影響が大きかったのかもしれません。

音楽やアイドルのライブシーンはとても見応えがあってよかったです。くるみちゃんが発狂してしまうシーンも(アイドル映画で発狂なんてワード出てくるのか?出てくるんだよなぁ)映像も演技もとても素晴らしかったです。その前から見ていたら「まぁ、そうなるわな…」というシーンでもありますが、アイドルのキラキラとした描写からじわじわと暗部が見えてくるギャップの深みがありました。

また、ゆうちゃんの「彼氏がいるって知ってたら友達になってなかった」というセリフも、ギリギリ言いそうなリアル感がありましたね。生粋のお嬢様、高専ロボット部のアイドル、自己肯定感低めの美少女と「キャラクター」的な面が前に出されていた他の3人に対して、東ゆうの舌打ちしたり毒づく生々しさ。そのギャップも面白かったです。

現役アイドルが執筆したストーリーということを頭の片隅に置いて見ると、「大人たちが全部お膳立てしていて〜」というのも、淡々とモノローグでつぶやかれていましたが、そのあっけなさも含めてリアルだったんじゃないなぁと。ひとりの高校生が頭をひねってノートにしたためていた計画も、大人の世界に足を踏み入れた瞬間に元々用意されていたレールに乗って前へ前へと進んでしまう。ライブシーンのゆうちゃん1人だけ生声で、他の3人はCD音源で披露したことにより、かえって生声だけ目立ってSNSで批判される…というエピソードも、おそらく実際にあったことなんじゃないでしょうか。乃木坂は詳しくないので他のアイドルだったかもしれませんが…。

全体的に決して悪くはなかったのですが、もうひとつパンチがあってもよかったのかなと感じたところ。ゆうちゃんはもっと悪辣でもよかったのでは…。楽しい時も悪い時も、もう少し上下のギャップがあっても良かったのかなと。

人間はきれいなものではないけれども、アイドルはいつだって輝いている。そんな信念を感じた物語でした。アニメ映画はすぐに上映が少なくなってしまうので、気になる方は是非劇場に足を運んでみてください。人によって感じ方の異なる、一口には言い表しにくい作品だったと思います。

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