競争領域と公共領域|ICTと社会
日本のICTインフラは、旧電電公社の民営化によるNTT誕生(1985年)と、競争事業者である新電電3社(第二電電、日本高速通信(ともに現KDDI)、日本テレコム(現ソフトバンク))の誕生以来、急速に発展してきた。当時、東京~大阪間で3分間電話(もちろん固定電話)すると400円もかかっていたのだ。それが新電電を使えば300円になる、というところからスタートした(現在ではIP電話技術により、ほぼゼロ円となっている)。
その後のインターネット、携帯、スマホの発展は、説明するまでもない。
日本のICTの発展は、各通信キャリア間の競争(切磋琢磨)によって成り立ってきたと言っても過言ではないと思う。
だが、競争に頼り過ぎた面があったのではないだろうか?企業競争は収益の上がるところにしか成り立たない。収益性の低い、つまり儲からない分野、例えば公共的な分野(教育もここに含まれるかも)とか田舎のほうでは、うまく競争原理が働かなかったと言えまいか。
こういう儲からない領域は、「公共領域」として、政治や行政が主導して整備を図らねばならない。日本のICT教育の遅れは、ここが弱かったことが大きく影響していると思う。
街なかのWi-Fiインフラが諸外国に比べて遅れているのも、ここに原因があると見ている。通信キャリアにとって、無料のWi-Fiインフラを整備するモチベーションがないのだ。
全てをキャリア間の競争に委ね、「公共領域」として行うべき整備がなおざりにされてきたことが、いま響いているように思う。
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