「オオサンショウウオ」両生類イチ巨大な生物の腹のなか
スーパーマーケットの駐車場に
特別天然記念物が展示
先月、兵庫県朝来市を拠点にオオサンショウウオ(Andrias japonicus)の研究をしている日本ハンザキ研究所が、このオオサンショウウオの生体展示イベントを行っていると聞きましたので、うかがってきました。オオサンショウウオといえば、岐阜県、愛知県以西の、一部の里山の清流でみられる特別天然記念物です。個体数も減少しているという報告もあるオオサンショウウオが、スーパーの駐車場で展示されるとのことですので、個人的には驚きのイベントでした。
イベントに行ってまず目に入ったのは、その大きな水槽。私の両腕を目いっぱい広げて抱えても、抱えきれない大きさの水槽が長テーブルの上にでん、と載り、そのなかで体長は約100cm のオオサンショウウオがゆったりと動いていました。オオサンショウウオは時折水面から鼻先を出して、私たちに少しだけ顔をみせてくれました。つぶらな目に大きながま口。なんでも丸呑みしてしまいそうな印象を受けました。
1日当たりの食事量は体重の0.1%
大型な体に不相応な少食系
「これだけ大きな体だから、かなりの量を食べるんだろう」と思っていましたが、じつはオオサンショウウオは少食です。野生個体では1日当たりに食べる量は、体重の0.1%といわれています。体重10kgを超える個体もいるそうなので、だいたい10gの食事量と考えると、約150gのアジ1尾食べただけで15日過ごせる計算となります。
オオサンショウウオは実際、どんなものを食べているのでしょうか。生息環境から川の魚は当然のこと、カエルやサワガニ、鳥類やネズミまで食べるそうです。
川中では生態系の頂点であるオオサンショウウオ。その存在は、豊かな自然環境が保たれている確かな証しと呼べるでしょう。
「反転する」「3つに区分」
知られざる胃の話
私たち人間は異物や毒物など、取り入れると危険なものを嘔吐して外に出そうとします。ですがこのオオサンショウウオは、胃を反転させることで異物を外に出しているかもしれないそうです。イベント会場で貼り出されていたポスター報告によると、野外でみつかった7個体のうち、2個体でこの現象が確認できた、とのことです。
また、オオサンショウウオの胃の構造は、単純な筒型のものではなく、3つに区分されているそうです。これはそれぞれの区分で役割が異なる、という説や、生きたエサを胃中で保持しているのでは、といった考えがあるようです。
少食なのに体がこんなに大きくなるひみつは、こうした研究から明らかになってくるのでしょう。ほかにもまだ、野生下で何年生きるのか、どれだけのペースで数が減っているのか、といった謎が残されています。研究者たちの日々の頑張りが、オオサンショウウオを謎を解き明かすだけでなく、生き物そのものを守ることに繋がるのだと実感できたイベントでした。
参考文献
・関慎太郎(写真)AZ Relief 桑原一司(編著)『日本のいきもの ビジュアルガイド はっけん! オオサンショウウオ』緑書房 2021年
・岩国市総務部秘書広報課広報班(編集・発行)「広報いわくにNo.253」2016年9月15日号