クジラのオハウ風お雑煮をつくってみた!
昨年はたいへんお世話になりました。本年もまた、「いきものぐるり」をよろしくお願いいたします。
2025年最初の記事は、北海道でのクジラの食利用について少しお話しながら、お正月につくってみた「クジラのオハウ風お雑煮」を紹介したいと思います。
アイヌの人々も愛した
伝統の「温かい汁物」
「オハウ」とはアイヌ語で「温かい汁物」という意味で、古来アイヌの人々は沿岸に漂着したクジラの肉や脂肪を生活に取り入れていたそうです。現在でも北海道の道南地域では、お正月になると「鯨汁」として三が日に振る舞われるそうで、道内のスーパーでは塩蔵された「塩くじら」が並ぶとのこと。
なぜ、お正月にクジラなのか。江戸から明治にかけ、北海道ではニシン漁が盛んだったそうで、クジラは「ニシンを岸まで運んでくれる、ありがたい生き物」としてたいせつな存在だったそうです。そのため、初春から始まるニシン漁の豊漁を願い、お正月にクジラを食べて験担ぎをしているとのこと。……そんなありがたい生き物を食べちゃうのか、とわたしはちょっと思ってしまいましたが、それだけクジラは北海道の人々の生活に溶け込んだ生き物なのでしょう。
滋味深い鯨肉の風味と
生姜の香りが美味で◎
さて、わたしのつくったクジラのオハウ風お雑煮ですが、三が日の2日目にお雑煮の味変くらいの気持ちで試してみました。ちょうど買ってもらったクジラの缶詰があったので、それとおせちの残り(にんじん、里芋、しいたけ、ごぼう)を材料に。
クジラの缶詰とおせちの残りを合わせて鍋に入れ、しょう油、市販のそうめんつゆ、料理酒、お水を適量加えて、じっくり火にかけます。すると、缶詰に入っていた煮凝りのようなゼリー状のものが鍋のなかで溶け、まろやかなスープとなっていきます。ふんわりと生姜の香りが立ち込めたところで火を止めて、器に移し、焼きたてのお餅を乗せて完成。クジラ肉特有の香りが、異国の雰囲気を醸し出してくれています。さて、そのお味は……?
クジラの滋味深い風味が口のなかで生姜の風味と合わさって、とても美味でした! 野菜のあま味もほどよく溶け込んでいて、体の芯からじんわり温まる一品でした。あと乗せのお餅も香ばしく、一杯で充分お腹が満たされました。
食と生き物の関係については、日本各地の歴史を紐解くとさまざまな物語が存在します。今年はそういった話も記事にして、発信できたらと考えています。クジラ肉についても捕鯨の是非や文化的な背景もかなり奥深いので、がんばってまとめてみたいところですね。
参考文献
・人気漫画ゴールデンカムイで登場した「くじら汁」を深堀り 産経新聞2021年1月15日
・農林水産省HP「うちの郷土料理」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/kujirajiru_hokkaido.html(2025年1月3日確認)