失敗しないチームビルディング

前回、プロジェクト計画書について書いた

端的にまとめると、固有のゴールのある仕事であるなら、どんなものでもプロジェクトであり、規模の大小に関わらず計画を立て、且つ、それを計画書のカタチで明示化することが成功のために有用である、という話。

さて、プロジェクトを複数人で進める場合、当然ながらプロジェクトチームが編成されることになるのだけれど、その際のチームビルディングについて本稿では触れてみたい。例によって、チームビルディングに関するマトモな話については、世の中にさまざまあるはずなので、ふつうではない切り口で書いてみたい。

以心伝心など幻想であることを知る

前提として、人がふたり以上集まれば、必ず認識や考えの齟齬が起きる。それに思い至らず、そのズレを改善するための手を打たなければトラブルが起きるのは自明である。「認識は揃っていると思っていた」「まさかそこがズレているとは思わなかった」よく聞かれる話だが、これは甘えであり、言い訳である。反省のフリをした他責思考と言える。大抵の失敗する原因はここにある。

純粋無垢な子供ならまだしも、この世に生を受け、20年も30年も生きてきたのなら、家族や友人、恋人、さまざまな人間関係の荒波の中で、数え切れないほどの認識の齟齬に起因するとても厄介な出来事に苛まれてきたはずである。良い悪いや優劣の話ではなく、他人とはそういうものなのであり、むしろ、自分と考えは同じだと思う認識こそが間違っている。みんなわかっているはずなのに、なぜか同じ過ちを繰り返す。プライベートなら相手に淡い期待を抱くのは勝手だが、それで傷つくのは恋愛くらいにしておいた方が良い。仕事においては以心伝心などないことを心に刻もう。

それでも分かり合うことはできる

ではどうするのかというと、以心伝心は無理でもわかり合うことはできる。

誰しも、些細なことで喧嘩したことが幾重にもあると思う。その際、その関係が大切なものであるなら、時間を掛け、手間暇を惜しまず、自分の考えを伝え、相手の考えに耳を傾けるだろう。必要なら議論を重ね、納得するところまで話し合うはずである。

プロジェクトでも同じである。全く同じことをすればよい。というか、友人との相違も、恋人との喧嘩も、すべてはプロジェクトである。好きな相手と如何にして気持ちを同じにするか、楽しく過ごすか、望む未来を作り出すか、そういう固有のふたりにとってのゴールがプロジェクトの目的であり、それを実現するためのさまざまな算段がプロジェクト計画である。

プロジェクトの目的をドキュメントの字面だけでなく、その裏にある背景や課題なども含めて共有し、なぜその目的とするのか納得するまで話をしよう。そして、その目的を実現するために必要なことをひとつひとつ認識を合わせて行こう。そのために「プロジェクト計画書」は非常に有用である。なぜなら、これらがすべて明文化されているので、口頭では聞き逃してしまう些細なことも、立ち止まって議論ができるからである。計画に誤りがあれば、その先もきっとうまく行かない。例えうまく行ったとしてもそれは偶然である。

すり合わせることで精度を上げる

プロジェクト計画書の初版は精度に拘らなくて良く、むしろできるだけ早く作って、関係者間で揉んだ方が良い。その方がトータルでは圧倒的に早く精度を高められる。内容が粗くても、明文化されたことで問題点が顕在化するので、議論を進められるし、どんどん計画を修正していける。初回の精度に拘り、時間を浪費することより、関係者から叩かれることを恐れず、机上に乗せて話を前に進めよう。

あとで後悔しないために

よく言われることとして「言うべきことは言えるときにキチンと言おう」というものがある。そう、あとでは遅いのである。仲が拗れてから「実はあのときこう思っていた」と言っても、そんなものはあとの祭りだし、ただの言い訳でしかない。本当に大切な関係なら、大切なプロジェクトであるなら、いちばんはじめのタイミングで、しかもできるだけ丁寧に話をしよう。そして、これがチームビルディングのために最も大切なことである。プロジェクト計画書の中身については前稿を参考にして欲しい

エスパーでもない限り、分かり合うための努力をしないのは、ただの慢心か、怠慢か、無能である。分かり合うことにテクニックはあった方が良いが、本当に必要なのは分かり合おうという気持ちであり行動である。誰かが悪いと責める前に、計画を考え、明文化し、話し合うための時間を作ろう。

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