フルマラソンを走って、世界が変わった話。
私がはじめてフルマラソンを走ったのは、18歳の秋だった。
受かると思っていなかった四年生の大学に受かり、短大進学後、すぐに就職するはずだった私に与えられた突然のモラトリアム。今だけは、今しかやれないことを、何だってやってやろうと思った。
そうして入った部活の一環で、私ははじめてフルマラソンの大会に出場した。
関門も制限時間も知らず、21km以上走ったこともなかった。若さと勢いだけで出場したはじめての大会の道中は、必死すぎてほとんど覚えていないのだけれど、最後の2kmだけは今でも鮮明に思い出せる。
イヤホンから流れる、大好きなスキマスイッチのユリーカ。遠くに見える橋。たくさんのランナー。降り止まない小雨。雲の切れ間から差す光。
もうすぐゴールだと思った瞬間に、自分一人だけの力で42kmを走り切れるんだ、と分かった瞬間に、大げさじゃなく私の世界は変わった。不可能なことなんてないのかもしれない。そう思ったら涙が出た。
自分のことが大嫌いだった私は、あの時はじめて自分のことを少しだけ、認めてあげることができたのだと思う。
今でも時々、あの日の気持ちが蘇る。やってみなきゃわからない、不可能なことなんてきっとない。これからどれだけ大人になっても、そのことをずっと忘れないでいたい。
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