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2024年映画ベスト10


2024年映画ベスト10
01 夜明けのすべて
02 ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
03 ロボット・ドリームズ
04 SUPER HAPPY FOREVER
05 パスト ライブス/再会
06 哀れなるものたち
07 シビル・ウォー アメリカ最後の日
08 すべての夜を思いだす
09 チャレンジャーズ
10 ゴースト・トロピック

01 夜明けのすべて
人は完璧じゃないからこそ助け合うことでお互いの世界をより良くできる。特別ではない関係の距離感すら優しい。何気ない瞬間を柔らかに”映画”にしてみせる三宅監督の眼差しが、劇的ではない瞬間にも物語があるのだと肯定してくれるように感じる。
自分が自分であることの苦しみも誰かのための優しさに繋がっている。そうやって明日を生きる理由をくれる映画に本当に救われている。

02 ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
現代ではない物語、現代的ではないフォーマットが逆説するテーマの普遍性。「これぞ映画」という緻密な構成、繊細な演出によって人間関係や各々の抱えているままならなさが少しずつ解凍されていく。
いくつになっても人はより良い人間になれるという人間の尊さを映画ならではの説得力で届けてくれる真摯で切実な物語。

03 ロボット・ドリームズ
シンプルなタッチのアニメーションから溢れる驚くほど豊かな情感。かつての大切な存在が教えてくれた後悔や痛みが今を抱きしめる優しさになる。代替不可能な時間や関係を恋愛に限定しない物語として描くことで「一期一会」というテーマにより普遍的な広がりを持たせているところも素晴らしかった。

04 SUPER HAPPY FOREVER
「なにもない」という喪失感の積み重ねが「確かにあった」という実感の切実な救いを際立てる。
人生は有限で、全てはいつか終わるからこそ、それがやがて来る悲しみだとしても「大切なその時」を積み重ねることが生きる意味になるのだと思う。ビヨンド・ザ・シー=有限性の向こう側に物語が広がっていくラストのような希望が人生にはあるのだと信じたい。

05 パスト ライブス/再会
人生の限界すら美しい物語として見つめる映画の眼差し。不可逆な時間の中で他者の物語に寄り添うことで重なり合う人生。
まるでソール・ライターのように「街と人」というその人のアイデンティティを切り取る見事な撮影と、美しい一瞬を彩る音楽の詩情。

06 哀れなる者たち
既存の価値観や倫理観による解釈を拒絶するようにモリモリと想像の斜め上を突き進む痛快なブラックコメディ。鋳型にはめさせない主人公の物語は「わたしは誰のものでもない」という彼女自身の自己決定の再生そのものでもある。
キャスト陣の見事な怪演、見せ方の面白さ、デザインや音楽のオリジナルな手触りなど映画としての総合的な質の高さも見事。

07 シビルウォー アメリカ最後の日
直線的な物語構造に乗せて徐々に緊張感の高まる場面を積み重ねる見事な完成度の脚本構成。戦争の本質を巡る地獄めぐりのような寓話であり、「ジャーナリズムは暴力にどこまで接近できるか」というヒューマニズムと継承の戦いの物語でもある。
暴力的な状況を芸術的文脈に切り取る写真の力と、それ自体が観客へのメッセージでもあるという映画からの問いかけ。

08 すべての夜を思いだす
人一人の世界の限界をフワリと飛び越えるように、場所や時間を通じて独立したそれぞれの世界がリンクしてやわらかに輪郭を広げる瞬間がある。一人だけど独りではないこの世界の豊かさをささやかに見つめ続ける映画の繊細な眼差しに心を揺さぶられた。
自分から見えている”今”の外側にある不確かになってしまった時間や場所に「すべての夜を思いだす」というタイトルを重ねてしまう。

09 チャレンジャーズ
時系列が前後するたびにどんどん面白くなる序盤や、テニスのラリーのように勝負の行方に振り回される終盤と、まるで観客の心を弄ぶような構成がそのままデンゼイヤ演じるヒロイン タシの思い描く理想のゲームそのもののようでもある。
「男の競い合いの一環としての恋愛」という本当にしょうもない体育会系の生態を映画の素材として見事に料理してしまうルカ・グァダニーノの底知れない作家性に奮えた。

10 ゴースト・トロピック
終電を逃したおばあさんが深夜に一人で歩いて帰る、という切実に心配な状況に積み重なる人と人が出会う豊かさや温かさ。画面に映るものからどれだけ多くを共有できるのかを投げかけるかのような冒頭のモノローグが、劇中のシンプルな展開に広がりや奥行きを生み出し続ける。
出会った他者同士=切り取られた物語同士が尊重しあうことで生まれるささやかな融和。

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