46. 全国通訳案内士口述試験受験記(2024年度)
0.はじめに
いよいよやって参りました。
2021(令和3)年初受験から4回目の挑戦で、やっと、ついに二次試験に挑めることとなりました。
一生に二度以上挑むことがあってほしくはないこの試験。
いや、正確に言うと、二次試験は二度以上あっても構わないのですが、あの一次試験のために人生の時間をなるべく多く過ごしたくないというのが本音。
今後のために、自分自身のための備忘録として、二次試験の流れをここに記します。
1.受付までの間
私の受付時間は午後0時ちょうどから午後0時25分までの間。
試験時間は午後1時~午後2時の割り当てでした。
会場の下見も兼ねて結構早めに会場に到着しました。
受付開始までの間、近くの建物で温かく過ごしました。
待ってる間、いろいろなことに思いが巡りました。
今から臨む試験は過去3年間の時間をかけて培った知識を生かす場。
ここで緊張に飲まれて実力を発揮できなかったとしたら、一年間、すんごいくやしさを引きずって学習しなければならない。
どんなトピックが来ても一応対応できるだけの勉強を積み重ねてきたはず。
けれども、どうしようもないトピックが出てくるかもしれない。
そんな思いがよぎります。
例え難局に陥ったとしても、どう機転を利かせてその場を乗り切るか、考えれば、より一層緊張が募ります。
一人で悶々としている間、あっという間に午後0時を過ぎました。
運営関係者の方の親切な案内で受付会場に足を運べました。
2.受付
受付会場は建物1階の教室。
混雑もなく、受付を終えることができました。
受付担当の係員の方がタブレット端末を使い、私の口述試験受験票のQRコードを読み取ります。
さらに、身分証明書を提示し、人物確認を行います。
係員の方の手元には受験者氏名と受験番号の書かれた紙があり、受付終了者にチェックマークを入れておられまして。
一覧表を覗いてみると、各人に1ー①など個別の番号が割り振られていることがわかりました。
隣の係員の方から、青色ストラップを首にかけてもらいます。
プレート部分には、受験番号と1-①などと番号が関われた紙が挟まっていました。
この1-①とは、「試験教室1号室の1番目の受験者」ということです。
試験教室2号室の2番目の受験者なら2-②となるのです。
その上で、その場ですぐに携帯電話の電源を切ってカバンにしまうように指示を受けます。
携帯電話(スマホ)の電源をいつもより入念に落とし、カバンに収め、待合室に向かいます。
3.待合室
教室に入ると、机に1-①など各人の番号が印字されたシールが張り付けられており、座席は指定されていました。
ここで分かったことは、25分間ある受付時間内であれば、いつ受付を済ませても試験の順番は変わらないということでした。
私はてっきり早めに受付を済ませれば早めに試験を終わらせられると期待していましたが、全く関係ありませんでした。
机の上には、「2024年度全国通訳案内士試験口述試験受検上の注意事項とご案内」と題した用紙1枚がおかれていました。
私語禁止であること、電子機器の電源を切ること、飲食禁止であること、トイレに行くときはカバンを待機室内に置いていくこと、など、紙に書かれてはいるのですが、待機室内の運営担当者の方は何度も何度もこの紙を読み上げ、注意を促していました。
午後0時55分ころから、運営担当者の方の声掛けで、①の番号が割り振られた受験者が教室の後ろに整列を求められ、揃って試験室に向かっていきました。
その後、待機室の運営関係者の方から「だいたい15分おきに声をかけていきます」と説明を受けました。
周囲の方は、予備校で使用した問題集、市販されている日本文化に関する書籍、バインダー、手持ちのノートなど、様々な資料に目を落とし、それぞれの時間を静かに過ごしていました。
ぱっと見て、他の受験者の年齢は思っていたほど高くなかったのが意外でした。
東京での一次試験会場では、"セカンドキャリアとしての挑戦!"といった年齢の方が非常に多く、TOEICや英検に見られないほど落ち着いた受験者にあふれていたからです。
口述試験会場での男女比率は半々くらいでした。
皆様、それぞれの目標をもって、この試験に臨んで来られたのだと思うと、改めて、この試験の意味合いの深さ、この場に来れた喜びをひしひしと感じました。
緊張より感謝を強く感じるよう努め、自分の順番が来るまでの間、私は下を向き、深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせていました。
4.いざ、試験室へ
運営関係者の方のおっしゃっておられたとおり、一人当たり概ね15分くらいの時間間隔を置いたタイミングでお呼びがかかり、教室の後ろに整列しました。
全員揃うと、係員の先導により、試験室へ向かいます。
試験室は待機室の階下。
階段を降りようとしたところで、インカムを持った方が私たちの歩みを止め、廊下でしばらく待たされます。
5分ほど経ったでしょうか。
ゴーサインを受け、階段を降り、試験室が視野に入ると、日本人の試験官の方が試験室の前で待ち受けてくださっている姿が目に入りました。
これまでの試験レポートでは、「試験室前で椅子に座り、待機する」と書かれていたので、違うシチュエーションに「いきなりかっ!」と驚きました。
私はまだコートを着たままだったにもかかわらず、日本人試験官の方から「Come in!」と誘われ、焦りました。
試験室前廊下には椅子が一脚置かれていて、私は手に持っていたカバンを置き、コートから袖を外し、中でお待ちのネイティブ試験官にあいさつしました。
私が使用できる机は一台。その前に椅子は二脚。
机の上にはA4の白紙1枚とキャップ付きボールペン1本が置かれています。
ネイティブ試験官は「椅子の上にカバン置きなよ」と促してくれました。
着席していよいよ戦闘開始です。
5.試験開始
私から見て左手に男性のネイティブ試験官。見るからに人が好さそうな感じです。
右手には女性の日本人試験官。優しそうな印象です。
お二人の机の上には、ラベルの剥がされた500mlミネラルウォーターペットボトルが2本置かれていました。
女性試験官による日本語のアナウンスにより試験開始です。
まずは、プレゼンから。
男性試験官がわざわざ私のところに持ってきてくださったA4の紙に書かれたお題を基にプレゼンを行います。
私へのお題は以下の3点でした。
①京都御所
②冬至
③かまくら(鎌倉ではない)
どれも準備していないトピックばかりでした。
春分(Vernal Equinox Day)と秋分(Autumnal Equinox Day)、そして彼岸はばっちり勉強していたのに、よりによって冬至とは。
「night が longest だ」としか言えないので、却下。
かまくら。
こんなお題、準備してない。
日本語であったとしても、うまく、そして面白く説明できるほど、冷静である自信がその時にはありませんでした。
あえて「観光地の鎌倉ではない」と丁寧に書かれていたのがツボにはまり、このトピックと深くかかわりを持つことを避けました。
結局、行ったの事のある京都御所を選択しました。
京都ネタなら話題を他の観光地に転化させ何とか逃げられそう。
ディフェンシブな自分が垣間見えます。
一応、2分間述べましたが、事実かどうか怪しい内容を含んでいたと思います。
間違いのない発言は「JR京都駅から近くてconvenientだ」というところくらいだったでしょうか。
あとは、京都御所を足掛かりに京都市内の観光地はだいたい行ける!と言って終わりました。
スピーチを終えると、時間計測をしていた女性試験官が力強くストップウォッチを押して時間の計測をやめたので、体感として、2分近かったか、ちょうど2分くらいだと推測しました。
それに続く質疑応答は2問で終わりました。
続いて外国語訳。
電子決済に関する文章でした。
女性試験官が読み上げる日本語について、メモを取ります。
ゆっくり読み上げてくれたのでメモが取りやすかったです。
だいたいうまく書きとれたのですが、英語を発話をするとき、自分の字を読めなくて、発話に詰まりました。
大きく反省です。
続いてロールプレイ。
鰻店前での想定です。
クレジットカードが使えないウナギの名店。
CMなら「じゃ、いいですぅ」と言ってオダギリジョーの前から立ち去って終わりです。
そんな時代錯誤の店にこだわるグルメな外国人ツアー客。
このデッドロックな場面で機転を利かせるアイディアが湧いてこず、男性試験官の反応を探りつつのロールプレイでした。
2問くらい質疑応答をしたところで、女性試験官から「終わります」と言われました。
あっ!
という間の(およそ)10分でした。
女性試験官から「メモは置いて帰ってください」と注意を受けた後、お礼を述べて立ち上がりました。
男性試験官から、「気を付けて帰ってね。せっかくだから鰻食べて帰れよ。」と言われたので、「もちろんです。カード使って食べます(笑)」と返し、試験室退室前に深くお辞儀して部屋を出ました。
私が試験室の外に出ると、他の試験室の方が廊下に並び、私一人を待ってくださっていました。
皆さん、首から下げていたストラップを運営関係者の方に既に返却しておられました。
だいぶ待たせてしまったのでしょう。
ウナギトークのせいでしょうか。
申し訳ございませんでした。
6.振り返り
帰り道、自分の発言を振り返ると、文法上のミスを非常に多くおかしてしまっていたことに気がつきました。
猛省です。
強い緊張のせいだと思います。
今から思えば、「かまくら」だって「スノードームだ!」「中はあったかい!」「Enjoy!」と言えばかなり話を膨らませることができたかもしれません。
偏屈な難解な一次試験に3年悩まされてきた時間の重みが自分自身にとって大きな重圧となり、柔軟な思考を妨げていました。
いずれにせよ、全国通訳案内士口述試験を受験できたことにささやかな達成感と喜びを得ました。
受験された皆様、本当にお疲れさまでした。