【心を奪われた一冊】辻村深月『朝が来る』

正直なところ、今でも明確な理由はわからないのですが、「何となく引っかかった」というか、「惹かれた」というか・・・。

決して新しい本でもない、特に話題になっている本でもなかったのですが、その中身が気になってしまい、「次はこの本を読みたい!」という気持ちでいっぱいになったのです。

そして、その本を図書館から借りて、少しずつですが毎日読み進めました。

その本は、辻村深月さんの著書「朝が来る」・・・この小説が私の心を虜にしてしまいました。

本書の概要をAmazonの説明をお借りして説明すると・・・

長く辛い不妊治療の末、栗原清和・佐都子夫婦は、民間団体の仲介で男の子を授かる。朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平穏な日々を過ごしていた。そんなある日、夫妻のもとに電話が。それは、息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった――。

自分たちの子供を産めずに、特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。
それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。

Amazonより

ネタばれになるので詳しい内容は書けませんが、とにかく最後の15ページで完全にやられてしまいました。登場人物の心理描写と、それにともなう仕草の描き方がとても繊細で、心にグッとくるのです。

私は本書を一度読み終えた後、最後の15ページだけを読み直しました。翌日、再び最後の15ページだけ読み直しました。

何回読んでも心を奪われてしまうラストシーンなのです。

そして私は思ったのです、「この本、図書館に返却したくない」。

ついに、Amazonで本書を購入してしまいました。

Amazonから本が届いたところで、借りていた本書を図書館に返却しましたが、それから購入した文庫本で3回目の読み直し、そして4回目のときは最後の15ページだけでなく、関連する部分や、気になった部分も併せて読み直しました。

私も読書経験はそれなりにありますが、こんな気持にさせられる小説は、そう多くはありません。それくらい、この作品にハマってしまいました。

少し余談になりますが・・・
先日、BSテレ東の番組「あの本、読みました?」のなかで、辻村深月さんが特集されていました。その際にゲスト出演されていた紀伊國屋書店のイトーヨーカドー木場店の書店員さんがこの作品を紹介していたのですが、その方は「出勤する電車のなかで読んでいたのに、嗚咽が止まらなくなった」と話していました。

その気持ち、私にもよくわかります(涙)

本書は内容を考えると、少なくとも独身オジサンよりは、むしろ女性のほうがはるかに共感できる本だと思うのです。辻村作品のファンの方はモチロンですが、そうではない方(特に女性)にもお薦めです。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集