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葵に込められた思い

5月15日は日本最古の祭事”葵祭”。
平安時代には祭といえば葵祭のことであり、いまも勅使が参加されている由緒ある祭祀です。今年は残念ながら、露頭の儀は中止となりましたが、神事は滞りなく催行されたようです。

この祭祀は、京都にある上賀茂神社と下鴨神社で行われていますが、葵祭に使用される葵という植物が境内に生えているのが、街からは少し北に離れた上賀茂神社。物の怪の気配さえ感じる静謐な空間に、春の訪れとともに芽吹き、晩秋には枯れて葉を落とします。

もとは葵のことを”あふひ”と書かれていたようです、”ひ”とは陽であり神を指したよう。春の陽光が葵の葉を照らし、葵のある山は光って見えたと聞きました、まるでそこで”神とあふ”かのごとく。

この葵というハート形が対になった植物の図柄は、実はよく私たちも見ているのです。徳川家の水戸光圀老が懐からおもむろに取り出す印籠に描かれているもの、そう水戸黄門が自身の身分を証する際に取り出すあれです。
”この紋どころが目に入らぬか” すると悪代官が平伏するという図柄です。

この三つ葉葵という植物は実在していません、天皇家の家紋が二葉葵であったことから原型にデフォルメして三つ葉葵になったといわれています。
それほどまでに神聖で高貴な植物である葵。
この葵に込められた思いは、五穀豊穣と国家の安泰、それは平安時代からいまもなお変わっていないものです。

百年に一度ともいわれる疫病。しかし神道では疫病さえも神として、万象あらゆるものを畏敬し共生することを教えてくれています。現代の抱えてきた社会問題が露見したいま、日本古来の風土信仰である神道に感じるものがあります。

今年の葵は例年になく活き活きとしていたとうかがいました、”あふひ”は私たちにどのようなメッセージを送ってくれたのでしょうか。

離れた地より上賀茂へ思いを馳せ、改めて国家の安泰を祀る。
令和二年五月十五日

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