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Olga Korotko『Crickets, It's Your Turn』カザフスタンの"プロミシング・ヤング・ウーマン"…?
Olga Korotko長編二作目。ダルジャン・オミルバエフの生徒だった彼女は2013年に『Reverence』という短編を共同で製作している(引用元のタルコフスキーらの作品と引用したオミルバエフ作品を並べている作品なので厳密に"撮った"わけではない)。ただ、印象としてはオミルバエフよりもエミール・バイガジンやファルハット・シャリポフといった同世代の作家たちに近い。映画はメレイというカメラマンの女性が、郊外の丘で風景撮影をしていた際にパリピ集団に出くわすところから始まる。その中の一人ヌルランに声を掛けられた彼女は、彼の誘いに乗って週末にある上映会に参加した。しかし、キスした瞬間に掛かってきた友人からの電話に出て、そのままソイツの家に行くことになり、行ってみたら下ネタジョーク満載のホモソ界隈でゲンナリ、帰宅中もヌルランはメレイに謝りながら男たちをフォローするという典型的な対応をする。メレイはヌルランの友人の誕生日パーティにも参加するが、山奥のコテージに到着すると、男たちは先に手配していた娼婦たちに囲まれ、登場したケーキはおっぱい型、プレゼントは拳銃というホモソっぷり。そして、嫌がる娼婦たちを帰したメレイは男たちに狙われ、遂にはヌルランのいないうちにレイプされてしまう。有害な男性性とそれに付き従う"直接的に手は出さないが有害さを支える"男たちを描いているということで、カザフスタンの『プロミシング・ヤング・ウーマン』と呼ばれているのも納得。特にヌルランの描き方は"男性集団の承認を必死に求める孤独な少年"とメレイが言及するほどで、同作のライアンにも通じるものがある。双方に良い顔をしたい彼の描き方は良いが、一方で一番重要と思われるメレイの複雑な心理の描き方は微妙で、特に終盤で強引な展開も目立つ。そこまで強引に見せたいシーンを繋げたのに、ラストの演説は薄いし要領を得ない感じで不完全燃焼気味。また、メレイが"白い部屋で変なことをする人を想像することで現実逃避する"という設定は、師匠オミルバエフが得意とし、以降の作家たちにも受け継がれる夢オチ展開をしっかり受け継いでいる。わざわざ言及する必要はないと思うのだが、師匠由来の妄想シーンを"違和感なく"組み込むには説明が必要と思ったのだろう。そにれよって逆に違和感を感じてしまったのが残念。ちなみに、題名は劇中でジョークがハマらなかったときに言う言葉である。映画自体がハマらないだろう"ジョーク"として捉えられているのか。
追記
それにして終盤でメレイに"取引"を持ちかける男たちの後ろに笑顔のトランプの写真がデカデカと置かれているのは面白かった。
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・作品データ
原題:Crickets, It's Your Turn
上映時間:105分
監督:Olga Korotko
製作:2024年(カザフスタン, フランス)
・評価:60点
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