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シュテファン・ウヘル『If I Had a Gun』スロヴァキア、もし僕が銃を持っていたら…

スロヴァキア映画鑑賞会企画。東欧の子供映画を観よう!企画。スロヴァキアの小さな村に住むヴラド少年は空想が大好きなイタズラ坊主。隣家の柵に干してある瓶を叩き割り、川にあるトイレの下に燃える草を盥に入れて流したりと悪行を重ねる一方、叔父の持つ高価な革鞄など自分には手の届かない物を持って周囲に自慢する未来を空想する。空想と現実はテンポよく入り乱れ、子供の思考のように取り留めもなく紡がれていく。そんな中で"銃"は"全てを解決する激レアアイテム"として少年の中で神格化され、それがレジスタンスへの憧れ、ナチス打倒への憧れへと結びつく。子供パルチザン映画はジャンフィセ・ケコ(『Tomka and His Friend』)を筆頭にユーゴスラビア/アルバニア映画界隈のお家芸かと思いきや、チェコスロヴァキアでは初遭遇。とはいえ、ジャンフィセ・ケコのような子供を主体とした作品というよりは、どちらかというと『ひなぎく』みたいな物語性を放棄したカオス、或いは『Birds, Orphans and Fools』的な身体の躍動と停滞に近い。プラハの春が破れて以降の同時代のチェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグの作品に近い空虚さを感じる。取り敢えず子供たちは現実/空想どこにいるにせよ、ひたすら動いているし、それに併せてカメラも動きまくるが、イタズラにも空想にもあまり血が通ってない空虚な感じがして、頗る恐ろしい。加えて、どれが現実でどれが空想で…とかいう次元を超えて、物語が欠片も理解できん。それも恐ろしい。

・作品データ

原題:Keby som mal pušku
上映時間:90分
監督:Štefan Uher
製作:1971年(チェコスロバキア)

・評価:70点

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