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ラヴ・ディアス『Naked Under the Moon』月光は破滅をもたらす

ラヴ・ディアス長編三作目。ピトピト方式で製作された最後の作品。事業に失敗した元神父の一家が田舎にある実家に戻ってくる冒頭は、ラヴ・ディアスらしからぬ青空と砂道のコントラストが良い。元神父の父親ラウロは実家に帰っても仕事が不安定で、地元の金持ちの知り合いに助けられているが、この男は実は妻クララの不倫相手でもあった。また、長女レルマは夢遊病が再発してしまう(英題"月下の裸体"とは全裸で深夜の森を夢遊病で徘徊する彼女のことを指している)。久々に会った幼馴染とレルマの関係は発展していくが、夢遊病についての解決策は中々出て来ない。本作品は犯罪ものが二作続いた後のセクスプロイテーション映画として、レルマが幼馴染と船の上でセックスしたり、クララが不倫相手と炭置き場でセックスしたり、と直接的な映像が様々登場する。しかし、それ以上に、ショットや編集、劇伴の精度が格段に上がっている方が驚きである。妊娠したことで捨てられたレルマが砂浜で海を観るシーンなど海のシーンが特に美しく撮られている。あと、クララが不倫を苦に自殺した後に絶望して自傷行為に走ったラウロに対して、神父が"死ぬ前に言われたんだけどアグネスは君の娘じゃないよ"と追い打ちかけてるのが面白かった。ラウロ以外の男は基本クソ野郎ばかりという安心設計。全体的に業が深すぎる話だが、挿話がドライに流されていくので湿っぽくならないのが好印象。

・作品データ

原題:Hubad sa Ilalim ng Buwan
上映時間:127分
監督:Lav Diaz
製作:1999年(フィリピン)

・評価:80点

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