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ニナ・メンケス『The Great Sadness of Zohara』孤独なゾハラの精神旅行

『Magdalena Viraga』『Queen of Diamonds』『The Bloody Child』へと続く緩い四部作の第一篇。本作品はエルサレムの正統派ユダヤ人コミュニティから疎外されている若い女性ゾハラを描く中編である。映画は『Queen of Diamonds』のように彼女の何気ない日常を追いかけるが、彼女の存在は奇妙にも無視されたように漂い続けている。ナレーションはゾハラの思考を導くように、彼女の声と同じセリフを吐き、遂には思考も奪い取る。ヨーロッパ系ユダヤ人の一家に生まれ、アメリカとイスラエルを往来していたメンケス自身がイスラエルで感じた疎外感や孤独を基にしているらしく、街中で真っピンクのツルッとしたシャツを着て浮きまくってるのも経験なんだろう。やがて、彼女は郊外の砂漠へと旅立つ。この荒涼とした心象風景のような砂漠は、『Queen of Diamonds』にも登場した。エルサレム、ラスベガス、それぞれ砂漠と隣接した都市という不思議な共通性があって興味深い。

最新作『Brainwashed: Sex-Camera-Power』では、彼女がハリウッドにおける女性の描き方について、長年問題視していることが実例とともに語られ、その主体/客体の章で本作品は登場した。確かに、エルサレムの通りで独り浮いてるゾハラを好奇の目で見つめる男たちという構図、或いはカメラを向き直ったゾハラと観客との主体/客体の関係性の入れ替えについては印象的な瞬間だった。

・作品データ

原題:The Great Sadness of Zohara
上映時間:38分
監督:Nina Menkes
製作:1983年(イスラエル, モロッコ)

・評価:70点

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