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ヴィヴィアン・チュウ『Trap Street』中国、地図に載らない道と謎の女を巡る不条理劇
ヴィヴィアン・チュウ長編一作目。デジタル地図製作会社で測量士として研修中のリーは、ある日、地図に掲載されていない通りを発見し、そこにある"研究所"に入っていった美しい女性グアンに心惹かれる。彼は先輩社員とそこに長居して、帰宅する彼女を駅まで乗せて帰った。翌日、彼女の忘れ物を発見し、彼女に会えることを期待して"研究所"に連絡するが、回収に来たのは上司を名乗るおっさんだった。グアンを忘れられないリーは再び"研究所"前で彼女を待ち伏せし、遂にはデートに漕ぎ着ける云々。原題"罠の通り"は元々不動産詐欺で用いられる、本当はないのに地図上だけ存在する通りのことらしいが、本作品ではその意味が反転され、本当は存在するのに地図上に存在しないことにされている通りを指している。デジタル機器にどっぷりと腰まで浸かった若者世代は、それらの通信が政府に監視されていることに実感が湧かないようで、リーも好奇心と恋に盲目になって、日常生活から滑り落ちるように、いつの間にか監視対象とされていた。前半の神出鬼没なグアンを中心とした不条理劇から、後半の監視国家を中心とした不条理劇への転換も実に上手い。
・作品データ
原題:水印街
上映時間:93分
監督:Vivian Qu
製作:2013年(中国)
・評価:60点
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