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レヴァン・アキン『Crossing』人は姿を消すためにイスタンブールへやって来る

レヴァン・アキン長編四作目。引退した歴史教師のリアは姪のテクラを探している。トランスジェンダーであることを告白して父親から追い出されて以来、テクラはジョージアを離れて行方不明となっていた。冒頭でテクラの暮らしていた地域を訪れたリアは、そこでアチというテクラと同年代の青年と出会い、共にインタンブールでのテクラ探しの旅に出かける。そこに、母親が出稼ぎで街を出ているためサズを弾いて日銭を稼ぐ少年イゼットや、地元のクィアコミュニティに属しつつ法学の学位持ちとして協力するエヴリムというトランス女性の物語が絡み合う。特にリアとアチの関係性の深め方が上手い。序盤のアチは"トルコで働きたいんだぁ"というザックリした夢を語るチャラ男という印象を与えるが、真面目に仕事も探しているし、リアが(そして我々が)想定していた以上にテクラ探しも真剣にやってくれる。一方のリアも、最初はアチを煙たがりながらも上手く利用してやろうと思っていたが、次第に"隣にいるくらいは許してやるか"と態度を軟化させる。ただし母親不在のアチの母親的な存在となるわけではなく、同時にテクラを探す原動力も"母親的な愛情"ではないのも良い。リアの感情的な変化を補足するのがエヴリムの挿話だろう。リアがイスタンブールのクィアコミュニティに接触するのと同じ頃のエヴリムの物語を同時に見せることで、彼女の物語がある意味でリアが作中の時間の後で知るかもしれないテクラが過ごした物語とも重なり、我々はリアの変化を(もしかすると彼女以上に)目の当たりにする。あとは、前作『ダンサー そして私たちは踊った』と同じく"踊り"が自己表現、或いは自己探索として機能しているのがやはり良い。三度あるダンスシーンはリアとアチの明白な転換点に置かれており、自分の内側を曝け出し見つめ直す時間へと様変わりする。

追記
二人がイスタンブール行きのフェリーに乗り込む瞬間に、カメラが二人を離れて船内を浮遊してイゼット少年のところに辿り着く長回しはとても良かった。ああやって迷い込んで、その先で予想だにしない人や物と"交わる"のがイスタンブールという街なのか。私は日本語堪能な絨毯屋に追われたことしか覚えてないが。

・作品データ

原題:გადასვლა
上映時間:106分
監督:Levan Akin
製作:2024年(ジョージア, トルコ, スウェーデン他)

・評価:70点

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