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カマラ・カマロヴァ『Bitter Berry』ウズベキスタン、夏の日の少年少女たち

大傑作。カマラ・カマロヴァ(Kamara Kamalova)長編一作目。カマロヴァは1938年にウズベキスタンはブハラの生まれ。1962年にVGIKの監督コースを卒業、レフ・クレショフとグリゴリ・ロシャルの門下生だったようだ。元々はアニメーター志望だったらしく、ウズベクフィルムでは人形アニメを10本ほど製作したらしい。そんな彼女の長編デビュー作が本作品。夏は気ままな休暇と恋の季節。少年少女たちは出会って恋に明け暮れる。主人公は13歳の少女ナルギス。彼女は川辺で出会った不良グループのリーダー、エルキンに興味を持つ。出会いのシーンも見事で、ナルギスは川辺で拾った青いガラスを透かして見ているのだが、画面上では半分くらいが青くなっていて他は元の色なので、新しい世界の扉を開けるという意味で暗示的だ。ナルギスはエルキンの気を引きたがる一方、エルキンは仲間の前ではナルギスへの興味を表明したがらない。二人の間の関係性微妙な変化は濃密な視線劇によって導入される。二人はほとんど同じ画面に入らないが、チラチラと互いがいる方向を見つめているのだ。また、ナルギスには9歳になる妹(?)ナリがいて、彼女は姉の行動を模倣してきたり、エルキンとの恋路を邪魔してきたりする。二人の関係性は視線ではなく動作によって測られる。二人が幼い弟の世話をしなければならないという義務も含めて、同じ動作を迫られる場面が多々あり、ナルギスは軽やかに身体を動かしてそれを躱そうとする。こういった捉えどころのない瞬間を描く繊細さがとても良い。

・作品データ

原題:Gorkaya yagoda / Горькая ягода
上映時間:65分
監督:Kamara Kamalova / Камара Камалова
製作:1975年(ウズベキスタン)

・評価:90点

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