20231210
ヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』を観た。中世イギリスを舞台に女王アンと、その側近として立身出世した実在の人物アビゲイル・メイシャムと女王の女官として権力を握っていたサラ・ジェニングスをモデルに描かれた政治劇。史実との相違も多少あるようだが、大体は史実に沿った流れで女性三人によるの愛憎と思惑との入り混じった人間劇だ。二〇一九年にアカデミー賞では『ROMA/ローマ』と並び最多9部門10ノミネート獲得。女王アンを演じたオリヴィア・コールマンが主演女優賞を獲得した。病身と孤独から愛に飢えるアンと親友以上の関係を結ぶサラ、父親に賭け事のために売り飛ばされて女王の元に志願して出世をもくろむアビゲイル。それぞれの関係が戦争による政治的思惑と重なり変容していく様は、まさに歴史に翻弄された権力者たちといった趣きだ。最後に愛とは何か、権力とは、人生とは、考えさせる終わり方になっている。
古賀コン3にエッセイを応募した。一時間で執筆した文芸作品を古賀氏が読み、大賞を決める。一時間という時間は改めて短いが、その中でどれだけ書けるか単純に試すにはいい機会となった。半年ほど前に、犬街ラジオに坂崎かおる氏がゲスト出演していた回で蜂本みさ氏とお二人は一時間ほどで書いた作品を朗読していて、その完成度の高さに感嘆して一度だけ「小説一時間チャレンジ」としてスペースで、げんなり氏と宮月中氏と一時間でテーマを決めて小説を書いてみたことがあった。今回は「完璧な日曜日」という予めテーマが決まっていたので、書きやすいはずだったのだが、いざ書くとなると上手くいかないものだ。フランツ・カフカは「審判」を一気呵成に書き上げてから、彼の不条理文学の体型を完成させた、とモーリス・ブランショは分析している。ミラン・クンデラは「変身」の仏語訳の改行の多さに憤慨したという。それは、彼の文学がギシギシに詰まった改行なしの文体にこそ魅力があると考えていたからだろう。実際、カフカ本人にとって「変身」に対する評価は低かったという。それはあまりにも物語として完成されていて、予測可能なものと思えたからとも言われている。わたし自身、どのような書き方が自分にとって適しているのか、まだ理解できていないからこそ、いろいろな書き方を試してしっくり来るものを探求したいと思っている。
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