20221211
晴れのち曇り。幾分か寒さが増した。公園ではクリスマスツリーが点灯し、その輝きは寒さを緩和するのに一役かっていることにふと気づく。人はなぜ冬にやたらとイルミネーションしたがるのか、若い時分はロマンチックなシチュエーションを演出するリア充によるリア充の為の電気の無駄遣いだと勝手に嫌悪していたが、勝手に恋人たちがイルミネーションを自分たちの気分の高揚のために利用していたのではないか、というのが今のわたしの考えだ。今日は大江健三郎『万延元年のフットボール』読書会の最終回だった。九章から最終章までこれまでの伏線を回収いていく怒涛のクライマックスであった。そこには確かにカタルシスがあった。ところが、いま改めてこの時代に読むといくつかご都合主義的な箇所が散見されて、大方の見方は不満だったようだ。わたしも菜採子の妊娠、鷹四の近親相姦と妹の堕胎、そして自死、この辺りに物語を盛り上げるためだけに死んだり、生まれつつある命について疑問を抱かざるを得なかった。とはいえ、一九六七年に書かれ、半世紀以上読み継がれている小説であり、大江の代表作と言われるのも納得できる作品であることは間違いない。